40-2 まだ終わっていなかった
「セイジツ君たちに何かあったんですか?」
「それは、行ってからじゃないとわからない」
「どうしてこれから行くんですか?」
「連絡がきたんだ」
「いつですか?」
「さっき」
「さっき?」リエルにかかってきた電話もメールもないので「どういうふうに連絡がきたんですか?」と聞くと、ポケットから、先ほど見ていたメモ用紙を出して渡す。
そこには「あやねだけ連れて、すぐ救急病院へ来い」と書いてあった。
「このメモ、どうしたんですか?」
「気付かなかった? さっき、僕に話しかけてきたチャラい兄ちゃんがいただろう?」
「はい。行きにアーモチーフに話しかけてきたチャラ男ですよね?」
「そう。彼は緊急時のメッセンジャーなんだ」
「エエッ! 本当ですか!」
「誰にも気付かれないようにするため、様々な姿で現れるんだよ」
「そうなんですか。じゃあ!」
「そう。定食屋へ行くとき現れたのは、チーフと先輩二人にメッセージを渡すためだったんだよ」
「じゃあ、ミシュウさんたちも救急病院にいるんですか?」
「そうだろうね」
「これはミシュウさんからですか?」
「いや。それはアモニスチーフからだよ」
「そうなんですか」
そうこうしているうちに病院に着き、お金を払ってタクシーから降りると「あやねちゃん、こっちだ」病院の裏手に向かって走っていく。
「正面玄関は閉まってて入れないから、職員口から入るんだ」
「でも、ドアを開けられるんですか? 暗証番号かパスカードがないとダメですよね?」
「今、先輩にメールしたから、開けてくれるよ」携帯を見せるので「なるほど。でも、勝手に入って大丈夫ですか?」
「緊急事態らしいから、大丈夫だよ」
裏手の職員入り口前に着くと、少ししてミシュエルがドアを開けて出てくる。
「早く入れ」
二人が中に入るとドアを閉め「こっちだ」足音を立てずにエレベーター脇の階段を上がっていく。
ミシュエルはそのまま五階へ行くと東端の部屋の前まで行き、二人に「どんな状況だろうと大声を出すな。わかったか?」いつになく緊張している感じなので「先輩。何が起きてるんですか?」リエルが深呼吸して聞く。
「説明するより、見たほうが早い」
「セイジツ君ですか? 桧山君ですか?」動悸が収まらないあやね。
「……二人ともだ」
「エエッ!」
ミシュエルがドアを開けると、近くに立っているアモニスが振りかえり「来たか」自分の隣に来るよう右手で合図するのでリエルと一緒に隣に立つと、異様な光景が目の前で起きていた。