38-1 締めの夕食会
その後、ミシュエルを先頭に里緒奈がバイトしている定食屋へ向かった。
「なんか、すごい集団ですね」周りを見るあやね。
帰宅する人でごった返す座山駅の南北通路を歩いていると、行き交う人達が道をあけるので、芸能人になったような気分になってしまう。
それというのも、前にミシュエルとアモニスが並んで歩き、二人の後ろをリエルを真ん中に、左にあやね、右に千奈津がいるからだろう。
「やっぱり、あの二人は先頭を歩くんですね」二人の後ろ姿を見るあやねに「まさに、似た者同士だろう?」とリエル。
行きかう人達が、モデルの写真撮影か映画の撮影かと噂しはじめているのに、先頭の二人はまったく気にしない。
「外出するたびに、ミシュウの服装をチェックするのが大変なんだよ」悩む千奈津に「今日は比較的おとなしい服装だと思いますけど」
「まあね!」
「……最初はどんな服装だったんですか?」
「深くスリットが入ったパステルグリーンのチャイナ服」
「ハハハッ、ミシュウさんらしい。そんな服装であの定食屋へ行こうとするなんて、すごいです」
「すごくない!」
「そうですね……」
そして、南口に出てデテーラの前の通りを歩いていくと、客引きのお兄さんたちがいるところへ進んでいく。
そして、怖いもの知らずのチャラい兄ちゃんが「超美人を連れてるそこのカッコいいお兄さん」と、無謀にもアモニスに歩み寄ってくるが
「なんだ」
「……あ……いえ、何でもないんで」そそくさと引き換えしていくので「用がないなら話し掛けてくるな」ひと睨みして歩いていく。
「ミシュウさんソックリ」
「ミシュウならきっと「邪魔だ!」かな?」千奈津が予測するので「正解です」
「やっぱり」
ここでも先頭の二人は行き交う人達の視線を集め、噂をされていた。
何もしゃべらず黙々と歩いていくので「これじゃ、何かの撮影と間違えられても、仕方ないね」
「そうですね。ところでリエルさん。さっきから黙ってどうしたんですか?」
「エッ? あ、ああ、ちょっと気になることがあってね」
「エッ、なんですか?」
「何でもないから騒ぐな」足を止めるアモニスが振り返る。「心配するようなことではない。リエル。二人を目的地まで連れていけ。ミシュエル、行くぞ」来た道を引き返していくので「あやね、心配するな。すぐ行く」アモニスのあとを追うミシュエル。
「リッ君。何が起きてるの?」千奈津が少し早口で聞くと「とにかく、僕たちは定食屋へ急ごう」歩きだすので「とりあえず行こう」あやねに声を掛ける。