37-2 契約の行方
「ということなんだけど、あやねちゃんはどうしたい?」千奈津が改めて聞くので「もちろん、続けたいです!」
「リエルは来週から海外だぞ」
「エエッ! そうなんですか!」隣のリエルを見ると「夏休みに入ったら、すぐ父親のところへ行くからね」
「……そうなんですか……でも、一ヶ月後には戻ってくるんですよね?」
「もちろん」
「しかし、里緒奈のサポートは終わりだから、次の依頼者のところへ行くんだろう?」
「そうですね」
「じゃあ、もう会えないんですか?」
「そうだね、残念だけど」
「そんなあ!」
「我々は遊びでサポートしてるわけじゃないんだぞ」
「わかってます」口を尖らせて反論すると「またここに遊びに来るから」
「リエル! 余計なこと言うなと言ってるだろう! 一体どこまで私の業務を妨害するんだ!」
「そんなつもりで言ったわけじゃないですよ。あやねちゃんが悲しそうな顔をするから、フォローしたんじゃないですか」
「それが余計だと言ってるんだ」
「……そうですか?」
「余計じゃないですよ!」
「では、契約は継続しないということだな?」
「そんなこと言ってません」
「因みに、契約内容は継続だぞ」
「ということは」
「そうだ。セイジツと付き合いたくないのであれば、契約継続は不可だ」
「そういうことですか……」
「セイジツの何が気に入らない? 人間だからか? 茶髪じゃないからか?」
「あやねちゃん、僕と君は住む世界が違うんだ、残念だけど。でも、友達としては会うことができるから」
「……そうですよね」
「リエル。気持ちが残るようなことを言うな」
「アモニスチーフのようにスパッと切れないですから」
「千奈津さんは大丈夫なんですか?」
「私は慣れてるから」
「ということは、サポートする人が変わっても、リエルさんはここに来るってことですね?」
「……まあ、そうなるかな」ミシュエルを見ると怖い顔をして睨んでいるので「ハハハハハハッ」苦笑する。
「でも、リッ君はあくまでもミシュウの仕事仲間だからね」
「割り切ってると言うんですか?」
「まあ、少しは」
「……そういうことですか」
「さっきリッ君が言ったように、私たちとリッ君たちがいる世界は違うからね。一種の憧れだよ」
「でも、こうして違和感なく話ができたら、その……お付き合いする人だって出てくると思うんですけど」
「その場合、我々は消滅してしまうんだ」
「エエッ、そうなんですか?」驚いてアモニスを見る。「どうしてですか? 皆さんはわかりやすく言うと守護霊なんですよね?」
「ちょっと違うな。我々は宇宙の意思の管轄の元にいる存在。人間と姿かたちが似ているのは、人間の世界で違和感なく行動するためだ。元はこのような姿をしていない」
「じゃあ、どんな姿をしてるんですか?」
「姿はない。輝ける存在、というところか」フッと笑うと「まあ、ここからは人間に説明したくとも表現する言葉がないから、ここまでだ」
「すみません、意味が解らない」
「わからなくていい。とにかく、我々は人間の進化をサポートする存在、と覚えておけばいい」
「……はい」