37-1 契約の行方
その後、部活が終わり、あやねがネイルサロンへ行くと、いつものメンバーが顔を揃えていた。
「アーモチーフ、犬の姿になってなくていいんですか?」
あやねがいつも座っている横長ソファの隣に座り、千奈津が入れた紅茶を飲んでいる。
「今日はこのあと出掛ける予定があるんだ」
「そうなんですか」
「あやねちゃんも一緒に出掛けるんだよ」ネイルテーブルの椅子に座っているリエルが理由を説明するので「私も一緒って、どこへ行くんですか?」
「僕がサポートしてる里緒奈のバイト先だよ」
「ああ、あの定食屋ですか。でも、なんで?」
「里緒奈のバイトが今日で終わるんだ。だから、最後にみんなんで里緒奈の料理を食べに行くんだよ」
「そうなんですか。そういえば彼女、引っ越しするって聞きましたけど」
「夏休みの間だけだよ。一ヶ月近く父親のところへ行くから、周りの友達が大げさに言ったのを、聞いていた周りの生徒たちが勘違いして、噂を広めちゃったんだ」
「そうなんですか。でも、いよいよ目標達成するんですね」
「そうだね。僕の役目もクライマックスだよ」
「因みに、私の役目もクライマックスなんだが」元気がないミシュエルが話し掛けてくる。
「どうしたんですか? 元気がないようですけど」
「元気なんか出るか」
「どうしてですか?」
「あやねちゃんがミシュウと契約した期間の最終日が今日だって、わかってるよね?」千奈津が聞くので「はい。ネイルチップも色が薄くなってきたので、どうするのかなって」
「終わりだ」
「エエッ! そうなんですか!」
「今日の午前零時を持って、契約は終了する」
「そうなんですか。じゃあ、このチップは今日で終わりですね」
「そうだ」
「そして、ミシュエルの課題も合格点に達しなかったので、再度、特別課題のやり直しだ」眉間にしわを寄せるアモニスが「お陰で、私はまた犬にならなければならない」ミシュエルを睨む。
「手の掛かるメンバーを持ったと諦めるんだな」
「誰に向かって言ってるんだ」
「責任者」
「次の課題が始まる前から減点されたいか?」
「そういうのをなんていうか知ってるか? 職権乱用と言うんだ!」
「二人とも! 言い争いする前に、あやねちゃんに理由を話すほうが先でしょう!」千奈津のカツで静かになる。
「そうだったな。あやね、悪いが、今回の契約は完了しなかった」
「はい。わかります」
「まあ、厄病虫の脱走事件が足を引っ張ったんだが、石頭がちゃんと考慮してくれなくてな」
「最大限の考慮をしたのに、文句を言うのか?」
「アーモ君、口を挟まないようにね」
「……わかった」
「そこで、あやねがいいのであれば、再契約して、さらに十五日間の期間延長をしたいんだが、どうだ?」
「そうすると、このネイルチップはどうなるんですか?」
「もちろん、メンテナンスするよ。しかも無料で」
「いいんですか?」
「責任者がいいと言うんだから、いいんでしょう」千奈津がアモニスを見ると「課題を終わらせることは規則上、必須だからな」