35-3 十四日目の問題解決済 詳細
「ミシュエル。少しは上司を敬え。今回もお前のミスをもみ消してやったんだぞ」
「あれはミスじゃない。想定内だ」
「先輩の想定内は危ないから、もうやめてください。いつも肝を冷やします」
「なら首を突っ込まなければいいだろう」
「突っ込みますよ!」
「でも! これで事件は解決したんですよね?」あやねが話に割って入ると「まだだ」即答するミシュエル。
「まだ終わってないんですか!」
「当たり前だろう。後始末があるじゃないか」
「後始末ですか? アッ、厄病虫がまだ逃げてるとか?」
「そうだったら、みんなここでノンビリしてないだろう」
「ああ……そうですね」ヘヘッと笑うと「まだ憑いててほしいか?」
「絶対イヤです!」
「あやねちゃん。厄病虫は捕獲所の別の職員数名が来て、蜘蛛採りカゴという小さな虫カゴでアッサリ捕まえて、帰っていったよ」
リエルの説明を聞いて「なんですかそれ? じゃあ、厄病虫とわかった時点で呼べばよかったんじゃないですか!」
「呼んだ相手が犯人だった」
「……シクシクシク」
「泣いちゃダメだよ、あやねちゃん!」大袈裟にティッシュを渡す千奈津。
「泣きたいです!」ティッシュを握りしめるあやね。
「僕もその事を知ったときはドッと疲れたよ」苦笑するリエル。「わざわざ犯人に状況を伝えて、みんなを危険な目に遭わせるようなことになったなんて、アホらしいことしちゃったんだから」
「リッ君のせいじゃないよ!」フォローする千奈津。
「そうだよ! リエルさんは一人で私を助けに来てくれたんだから」続くあやね。
「モテていいな、リエル」
「先輩。その言い方はやめてください」
「でも、リエルさんからの情報で、犯人は隠してた厄病虫が逃げ出してたことに気づき、こっそり人間界に来て、桧山君の中に入ることになったんですね?」
「そうだ」だるそうに答えるミシュエル。
「ミシュウさんは、どこで桧山君の中に犯人がいるとわかったんですか?」
「奴のケガの治りが異様に早かったのがキッカケけだ。通常、あのくらいのケガなら一ヶ月はベッドから出られない。
しかし、一週間足らずで歩き回ってる。これはイレギュラーな何かが起きてる証拠だ。
そこで、発するエネルギーの質を調べたら、人間が持たない、天界の者が放つ微量なエネルギーを検知したので、あたりを付けた」
「こういうあたりの付け方が、先輩にしかできない技なんですよね。普通、エネルギーの質なんて調べたりしませんから」
「誰でも何かしらの特質を持ってる。別に珍しいことではない」
「何か言ったか? アモニス」
「上司を呼び捨てにするな」
「する」
「減点対象だぞ」
「やめる」