表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
7/109

4-2 特殊ネイル


 あれこれと考えた結果「名前はたぶんセイジツだと思う彼と、お付き合い……」グシャグシャと字を消して「彼と仲良くなりたいです」と書きなおし、生年月日は、彼がかよう高校の剣道部と練習試合をおこない、仲良くなった部員から教えてもらった日にちを書いて契約書を渡すと「この生年月日、彼の名前の横に書かれてるけど、聞きたいのはあやねちゃんの生年月日」


「えっ、アッ、すみません! すぐ書き直します!」

「ああ、せっかくだから、彼の生年月日はそのままにしといて、自分の名前の横に書いて」


「はい」急いで書き足して渡すと、千奈津は悩み事欄を読み「フウン。今の状況から考えると、絶賛絶望中ってことか」


「あ、いえ、その……そんなハッキリと言わないでください」

「ああ、ごめん」

 

 あやねが俯くので「落ち込んでなんかいられないよ。これから挽回するんでしょう?」

「あ……でも……」


「ミシュウ、契約書」


 千奈津が、奥の窓に向かって斜めに置いてある一人掛け用のソファ向かって契約書を差しだすと、いつの間にか長髪ウェービーヘアの金髪の女性が座っていて、書面を無造作に受けとると悩み事欄を読む。


「彼と仲良くなりたい。友達でいいということか?」書面を返し「それなら直接言えばいいだろう。余程の変態でないかぎり、友達になってくれる。それは悩み事じゃない」


「余程じゃなくても変態はヤダけどね。確かに、この程度じゃ、わざわざ契約する必要ないね」

「エエッ! そんな!」


 金髪の女性は振り向きもせず、脚を組んで座り、頬杖(ほおづえ)をついて本らしきものを読んでいる。


「この国の人間はストレートにものを言わないから鬱陶(うっとう)しい。なにが本音と建前だ。遠慮してたら欲しいものは手に入らないし、なりたい状況にもならないだろうが」


「そうだけど、ミシュウみたいに強い性格の人間ばかりじゃないよ」

「とにかく、その内容では受け付けられない。書き直すか契約破棄するか、どっちかにしろ」


「どうする?」あやねに聞くと「どうすると言われても……どう書いたら受け付けてくれるんですか?」


「そんなこともわからないのか? 本音を書けばいいんだ!」金髪女性はため息を吐き、呆れた口調で振り向きもせずに吐き捨てる。


「ミシュウ、言葉が汚いよ。仮にも彼女はお客様なんだからね」千奈津が注意すると「……わかった」フウ、とため息を吐き「自分の心に正直になって、どういう状態が自分にとって幸せと感じるか、を書けばいい」


「はあ、自分の心に正直に」


「今は衝撃を受けた後だから、頭が働かないのはしょうがないよ」あやねの心情を思ってフォローすると「……はい」ウルウルウル。


「はいはい、泣かないの」ティッシュを渡すと「すみません。思い出しちゃって……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ