35-1 十四日目の問題解決済 詳細
「さっき、厄病虫が私の内面を食べていたのを、セイジツ君が代わりになったって言ってましたけど、どういう意味なんですか?」
「内面と言ったが感情のことだ。あやねの恋愛感情を吸い取ってたから、その事を知ったセイジツが無謀にも引き離しにかかって、戦いになったんだよ」
「戦いって、厄病虫と?」
「何度も言うが、虫だからと侮るな。なりは小さいが意思を持ち、考えるという思考を持ってる。
そして、あやねに憑いてた厄病虫はオスだから、普通、男の恋愛エネルギーは吸い取らない。
しかし、自分を捕まえにきたとなれば話は別だ。身を護るために防衛本能が働く。
そのため、攻撃に出るんだ」
「どんな攻撃をしてくるんですか?」
「奴は蜘蛛の一種だから、粘着質の糸で絡めとって、頭から食べる」
「食べるんですか!」口を押えて小声で驚く。
「虫だからな」
「そういえば、どうして先崎君は、私をあの病室から連れ出したんですか?」
「あやねにまだ厄病虫が付いてるとわかったサポート役が、先崎を動かして連れ出したんだ」
「どうしてですか?」
「あの時、あの部屋に犯人の盗人がいたからだ」
「犯人て、捕獲所の職員でしたっけ?」
「そうだ」
「どこにいたんですか?」
「桧山の中だ」
「……桧山君の中?」意味が解らず困った顔をすると「我々天界の者は、通常、人間には見えない。今いる私たちが見えるのは、特殊な対応をしてるからだ。
人間として振る舞えるようにな。
しかし、その対応が許可される者は限られてる。一介の職員ができることじゃない。
だから、人間界へ来るときは、誰かに乗り移る必要がある」
「それが、今回は桧山君だったんですか?」
「そうだ」
「しかし、あの時は驚きましたよ」リエルが疲れた声で話しだす。
「あやねちゃんを保護するために先崎君を追ってたら、あとから桧山君とセイジツ君が追いかけてきたんですからね。
さすがに、三人同時に対応することができなくて、どうしようかと悩みましたよ」
「病室にいたとき、ミシュエルが挑発するようなことを言うから、桧山の中にいた奴が飛び出してきそうだったので、私が部屋の電気を消したんだ」アモニスが話を続ける。
「お陰で桧山が病室から抜け出し、気が付いたセイジツがあとを追っていくので、私たちも追い駆けるはめになったんだ」
「また先輩が早とちりしたんですね?」
「まどろっこしいのは嫌いなんだ」
「時と場所と居合わせてるメンバーを考えろ」
「奴の動きは予測が付いてた」
「予測だけで動くなと言ってるだろう。この前だって、危なく取り逃がすところだったんだぞ。覚えてるだろう」
「あれは……予想外の動きをしたからだ」
「何度も同じことを言わせるのなら、減点だぞ」
「……わかった」
(ミシュウさんの弱点は、減点という言葉)やり取りを聞いているあやねがチェックを入れる。