30-2 十三日目の予想外 見えてくる結末
「そこまで言うんだったら、俺が犯人だという証拠を見せろよ」対抗するような態度で先崎が聞くので「見せられるんだったら、とっくに追い詰めて吐かせてるよ」言い返すセイジツ。
「エエッ? なんだよそれ」
「いわゆる、状況証拠だけ」
「ハア? なにそれ。立件できない状態なのに、俺を犯人呼ばわりしたのかよ」
「もしかしたら、慌てて認めるんじゃないかって思ってさ」
「友達その二。こいつ切っていいぞ」
「マジか!」目を輝かすと「ダメに決まってるでしょう!」止めるあやね。
「セイジツ、本当に証拠がないのか?」ベッドの桧山が聞くと「おれさ、お前も疑ってんだぞ」
「俺も?」驚いて自分を指さす。
「そんなこと言ったら、セイジツだって怪しいだろう」先崎が言い返すので「なんでだよ」
「この中で変な虫に憑りつかれた奴は、お前と桧山だけなんだぞ」
「……今、なんてった?」
「エッ、だからさ、変な虫……」
「変な虫って、何?」
「それは……」
(ウソ……厄病虫のことを知ってるのはミシュウさんたちだけのはずなのに、どうして先崎君が知ってるの?)
すると、凝視するあやねに気づく先崎が「まさか、華河さん、変な虫のこと知ってるの?」
「エッ!」
「知ってるんだ。どうして? 華河さんが知ることはできないはずだよ」
「あ……それは……」
「もしかして、捕まってないオスに憑りつかれてる?」
「エエッ!」
「そうなのか?」上着のポケットに手を入れるので「なにするの?」
「決まってんだろう? 捕まえるんだよ」
「なにを?」
「華河さんをさ」手を上げると、グループのメンバーがあやねを取りかこむ。
「はい、そこまで」
突然、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「私がいいと言うまで、動くんじゃないよ」
すると、病室のドアが開いて、行方不明になっていた友達その一と相川が、ミシュエルと一緒に入ってくる。
「ミシュウさん!」
「あやね、無事か?」
「無事じゃなくなるところでした!」
「それはギリだったな」
「一之瀬、どこにいたんだよ!」
「メッチャ心配したんだよ!」
「ごめんごめん。ちょっとあってさ。この美人のお姉さんに助けてもらったんだ」
「ミシュウさんが? なんで?」
「ちょっとな」
「ちょっとじゃないだろう? 私があちこち手を回して情報収集したからじゃないか」
ダークブラウンの長い髪に切れ長の黒い瞳をした、ダークグレーのスーツ姿の二十代の男性が入ってくる。