28-1 十三日目の予想外
次の日の午前六時過ぎ、あやねはまたスッキリと目を覚ますと、首に掛けてある黒曜石のペンダントを確認する。
「あれっ、形が変わってない。また捕まらなかったんだ」
さすがに二日も捕まらないのであれば、もしかしたら他へ移動しているかもしれないと思い「もう、この部屋にいないのかもしれない」
厄病虫がいなくなったのであれば喜ばしいが、戻ってくる可能性もあり、やはり捕まえて、二度と戻ってこないと確証を得てスッキリしたい。
「ペンダントの形が変わってないから、剣道の練習後、セイジツ君と桧山君のお見舞いに行かないといけないんだよね」
どうせなら、部屋にいる厄病虫が捕まって、ネイルサロンへ行けることを願っていたので、ガッカリしながら身支度を整えると「ミシュウさんと契約した期間は今日を入れてあと三日。まさか、こんなふうになるとは思ってなかったな」
セイジツへの想いが消えて、今はリエルのことで頭の中がいっぱいになっている。
「契約を途中でやめると幸福が一つ消えちゃうって言われたけど、一つくらい消えてもいっか」
制服に着替えると、バッグを持って部屋からでる。
ところが放課後、剣道着に着替えて体育館へ行くと、いつも三人でいる例の友人たちの内、二人が困ったような顔をして話し込んでいるので「どうしたの? 一人いないけど、何かあったの?」
「ああ、あやね。実はさっき、北条高校の先崎君からラインが来てて、前にみんなでお見舞いにいった桧山君が今朝から急に具合が悪くなったみたいで、集中治療室に入ったって連絡がきたんだ。それで、急きょ来てほしいって呼び出されて、慌てて出ていったんだよ」
「エエッ! そうなの! でも、どうして彼女の携帯に連絡が来たの? ライン、交換してた……そうだ、私の代わりに、ライン、交換してた」
「それでね。集中治療室に入ったって聞いて、私たちも気になっちゃって、どうするって話してたところなんだ」
「そうなんだ」
部活が終わったら行く予定だっただけに、なにかよくないことが起きている予感がするので「今日は部活休んで、みんなで桧山君のところへ行こうよ」
「でも、あやねは練習したほうがいいよ」
「一日くらい休んだってそんなに影響ないよ。それより、気になって集中できないほうが時間がもったいないでしょう?」
「まあ、そうだけど……」
「とにかく、顧問の先生に訳を話して行こう」
三人は体育館に入ってきた顧問の先生にわけを話し、更衣室へいって制服に着替えると、桧山が入院している病院へ向かった。