27-2 十二日目 まだ続きがあった
「もう一つ、なぜ私たちのところへ来たのかも気になる」
「どういうことですか?」
「三匹揃って、僕たちがサポートとして付いてる人間に憑りついたのはなぜかってことだよ」
「どういう意味ですか?」
「あやねとセイジツに憑いたオスとメスが対なのはまだ理解できる。だが、もう一匹が里緒奈の兄に憑いてたのが気になるんだ」
「エエッ! 桧山君に憑いてたんですか!」
「正確に言うと、最初は桧山兄妹に憑いてた」
「あっ、そうですよね。でも、誰が桧山君に憑いてた厄病虫を捕まえたんですか?」
「先崎のサポーターだ。あやねとアーモを合わせた私の後輩だ」
「ああ、入院してる桧山君のお見舞いに行くようにしたんですよね?」
「そうだ」
「じゃあ、捕まった桧山君に憑いてた厄病虫が、私に付いてる厄病虫の相棒なんじゃないですか? 元は妹の桧山さんに憑いてたんですよね?」
「そのはずなんだが、桧山兄妹に憑いてた厄病虫は、エネルギーをミックスし合ってなかったらしい」
「そんな事がわかるんですか?」
「まあな。エネルギーが拡散した痕跡が桧山家になかったそうだ」
「そうなんですか」
そうこうしているうちにあやねの家に着き、またタクシーを待たせて玄関前までいく。
「お茶でも飲んでいきますか?」
「こんな時間に上がり込んだら迷惑だろう」
「そんなことないです」
「ダメだ」
「あやねちゃん、また明日サロンに来れば会えるよ」
「本当ですか!」
「リエル」
「先輩も、あやねちゃんとの契約、忘れてないですよね? あと三日しかないんですよ」
「もちろん忘れてないが、リエルが出てきたお陰で、ちょっと微妙な状態になりつつある」あやねを見ると、リエルしか見ていない。
「すみません……」
「まあ、今回は本当に余計なことが起きたからな」
「そうですね」
「これで私の点数が減点されたら、ギッタギタにしてやる」
「先輩が日頃からもう少し注意していれば、監督者が付くことはなかったんですよ」
「説教か?」
「注意です」
「リエルも、今回の課題の契約を邪魔するようなら」
「しませんよ、と言いたいですけど」あやねを見るとニッコリ笑うので「しそうな気がする」
「代わりに減点してもらうぞ」
「それはやめてください」
ふと、笑顔で二人の会話を聞いているあやねに気がつき「ところで、あやねの部屋はどこだ?」話を元に戻す。
「エッ? 私の部屋ですか?」
「ここから見えるか?」
「はい」前庭へ向かうと家のほうを向き「二階の東の角部屋が私の部屋です」と指をさすので「いい場所に陣取ってるんだな」
「はい!」
「では、明日の朝起きてペンダントの形が変わってなかったら、部活終了後、セイジツと会って、一緒に入院してる桧山の見舞いに行け」
「エッ?」
「わかったな」
「どうして桧山君のお見舞いなんですか?」
「もしペンダントの形が正方形になってたら、セイジツに会いにいかず、ネイルサロンへ来い」
「どうして桧山君に会いに行くんですか?」
「それは、明日教える」
「今じゃダメなんですか?」
「ダメだ」
「……」
「あやねちゃん。もう少しで解決するから、協力してくれるね?」
「もちろんです!」
「リエル。減点な」
「やめてください」