26-2 十二日目にクライマックス?
「キャーッ! 来た!」
あやねと千奈津、二人して部屋の中をドタバタと動き回りながら大騒ぎするので「うるさい」ミシュエルが注意すると「うるさいですよ!」言い返すあやね。
「厄病虫が来たのにジッとしてられないでしょう!」パニックになる千奈津。
「ここは集合住宅なんだから、上下左右の部屋から苦情がくるぞ」
「……そうだけど……」千奈津がオロオロすると「あれ、どうしたの?」リエルが靴を脱いで上がってくる。
「リッ君」
「もしかして、玄関のベルを鳴らしたの、リエルさんですか?」
「そうだけど……鳴らしちゃ、いけなかった?」あやねと千奈津の形相をみて、少し怯む。
「よく考えてみろ」アーモが声を掛ける。「厄病虫が、わざわざ玄関のベルを鳴らして部屋に入ってくるか?」
「……確かに」落ち着く千奈津。
「そう、ですよね」ソファに座り直すあやね。
「アッ、リッ君座って。紅茶を入れるから」
「じゃあ、ミセスでドーナツ買ってきたから、みんなで食べよう」持っているボックスを千奈津に渡す。
「ありがとう。じゃあ、用意するから座って」
「リエル。セイジツの様子はどうだ?」ミシュエルがネイル用のテーブルに座るリエルに聞くと「今回、抜かれたエネルギーが多かったようで、しばらく放心状態でした。なので、緊急用の高エネルギーチップを付けたところ、二十分くらいして意識が戻ったので、今日は部屋で休むよう言って帰しました」
「そうか。思ったより厄病虫は力を付けてるんだな」考え込むミシュエル。
「先輩は、まだ何かいると思ってるんですか?」
「ン……まあな」
「本当ですか!」立ち上がるあやねに「うるさいとさっきから言ってるだろう」
「そんなこと言われたらうるさいって言ってるじゃないですか!」
「ここは集合住宅」
「……すみません」
「ミシュウ。その話、もう少し詳しく話して」ドーナツを持ってくる千奈津がドスの利いた声で聞く。「これ以上、虫騒動に関わりたくないんだけど」
「本拠地であるこのサロンに、そんな禍を持ち込むわけないだろう」
「……ならいいけど」
「千奈津。私がいるんだから、心配ない」
「そうだね。アーモ君がいてくれるから大丈夫だよね」
「千奈津。お前のガイドスピリッツが誰か、わかってるだろう?」
「もちろん。だけど、アーモ君はミシュウの上司。逆らえないでしょう?」
「……腹の立つ」
「今、腹が立つって言ったか?」聞きとめるアーモが、隣のソファに座るミシュエルを見上げ「わざわざ低い位置に留まってやってるんだぞ」
「言った」
「言うのか」
「さすが先輩」
「だろう?」
「褒めてませんて」