25-2 十二日目の成果
「こんなに小さいんですか!」チェーンを持って目の前にぶら下げると「どれだけの大きさだと思ってたんだ?」
「エッ、それは……モルモットかハムスターくらいかなって」
「あやねに憑りついて部屋に住んでると言っただろう? そんなに大きかったらすぐにわかるじゃないか」
「ああ、そうですね」掌サイズの正方形の黒曜石を見ると「それは回収する」ミシュエルが手を出すので、首からチェーンを外して渡す。
「これで、残りは一匹。あやねの部屋に住みついてる奴だけか」
「だから、その言い方はやめてください」
「だから、事実だろうが」
「二人とも、よく似てるよ」ため息を吐くアーモが「でもさ、どうやって捕まえるの?」と聞くと「それは考えてる。あやね、これからネイルサロンへ一緒に来い」
「でも、セイジツ君が心配だから」
「セイジツなら、リエルが家まで送った」
「エエッ!」慌てて花壇の反対へ行くと、セイジツもリエルもいなかった。
「いつの間に。でも、リエルさん、セイジツ君の家を知ってるのかな?」
「アイツは誰のサポーターだ?」
「エッ? 桧山さんだけど」
「そう。セイジツは里緒奈との関係をなんて言ってた?」
「えっと、幼馴染の妹って、アッ!」
「セイジツの家は里緒奈の家の近くだ」
「そっか」
その後、ネイルサロンへ行くと、千奈津が紅茶を入れて待っていた。
「お疲れ様。今日はお客さんからバームクーヘンをもらったから、食べる?」
「はい! 食べます!」いつもの横長のソファに座り、紅茶を飲むと「喉が渇いてたからおいしい」一気に飲み干す。
「そんなに大変だったの?」千奈津がバームクーヘンを乗せた小皿を持ってくると「大変じゃなかったけど、驚くことがいくつもあって、大声出しちゃったから」
「そうなんだ。紅茶、新しく入れるね」
「ありがとうございます」嬉しそうにバームクーヘンにフォークを刺す。
「ところでミシュウ」いつもの一人掛け用のソファ横のクッションで寛ぐアーモが「どうやって、あやねの部屋に憑りついてる例の生き物を捕獲するんだ?」
「アーモチーフ。その言い方もやめてください。悪霊が憑りついてるみたいに聞こえます」
「まあ、近いものがあると思うから、間違ってはいないと思うが」
「エエエエエエエッ!」
「うるさい」
「うるさいですよ!」
「あやねちゃん。ここ、集合住宅だから、大声は控えてね」千奈津が冷静に注意するので「すみません」小声で謝る。
「アーモ君も、ミシュウみたいな言い方はやめてね」
「私みたいとはどういう意味だ?」
「ストレートすぎる」
「わかりやすいだろう」
「わかる前に腹が立つって」
「そうか?」