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アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
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4-1 特殊ネイル

 

「でも、高いんですよね?」

「学生料金となると、普通コースが三千円で特別コースが五千円」

「あの、どう違うんですか?」

「普通コースは市販されてるネイルを使うけど、特別コースは特殊ネイルを使うの。そのネイルを着けると、悩み事が一つ解消されるんだよ」


「悩み事が一つ解消されるって、どんなことでもですか?」

「……たぶん」

「エ?」

「いえ、あなたの場合は大丈夫だと思う」

「私の場合は、ですか?」


「そう。どうして突然、彼が美少女と並んで楽しそうに歩いてたのか、訳を知りたいよね?」

「あ、はい! エ? どうして知ってるんですか!」

「アーちゃんから聞いたの」

「アーちゃんって、この犬ですか?」


「そうだよ。アーモちゃんのニックネーム、アーちゃん」

「聞いたって、犬は人間の言葉をしゃべりませんよ」

「まあ、普通の犬はね」

「ハ?」


「で、どうする? やってみる?」

「はあ、そうですね」


(ネイルをするだけで悩み事が解消するなんて、あり得なさすぎない? でも、このままだと気になって何も手に付かないし、またあの光景を見ると意識が吹っ飛ぶだろうし、五千円くらいなら何とか出せるし……)


「あの、お、お願いします!」

「じゃあ、この契約書にサインしてくれる?」


「契約書ですか?」学生の身分でそんな大それた書類にサインするとなる不安になるが「特殊ネイルを使うための使用許可書みたいなものだから、必要なのよ。どうする?」


 テーブルに置かれた契約書は縦長のA4版で、洋書のような飾り模様に縁どられている。


 一番上に契約書と大きく文字があり

『特殊ネイルを使用することを了承し、悩み事を解決すべく、誠意をもって対応することを誓います』

と書かれた文字の下に注意事項として

『ネイルの効力は半月(十五日)となるため、契約日以降に発生した悩み事は対象外とする』

とあり、現在の悩み事を書く欄と、続けて生年月日・名前を書く欄がある。


「内容を理解したら、ここの大きな枠に解決したい悩み事を、下の欄に生年月日と名前を書いてくれる? これペン」

「はい……」

「書き間違えたら、フリクションペンみたいに、反対のこの白い突起で(こす)ると消えるから」

「ヘェ、わかりました」


(なんかよくわからないけど、悩み事を解決するために頑張れ、期間は半月、みたいなことかな)

 渡されたペンを見ると

(これで文字が書けるの? ガラスでできたペンじゃ、インクか何か付けないと書けないんじゃない?)

 紙に筆跡が付くだけだろうと思いながらとりあえず名前を書いてみると、ボールペンで書いたように黒い文字が書ける。


(どこにインクが入ってるんだろう?)不思議そうにペン先を見ていると「書き終った?」

「あ、いえ、まだです」契約書に向きなおると(悩み事って、どう書けばいいんだろう?)


 あれこれと考えた結果「名前はたぶんセイジツ君だと思う彼と、お付き合い……」グシャグシャと字を消して「彼と仲良くなりたいです」と書きなおし、生年月日は、彼がかよう高校の剣道部と練習試合をおこない、仲良くなった部員から教えてもらった日にちを書いて契約書を渡すと「フウン。今の状況から考えると、絶賛絶望中ってことか」


「あ、いえ、その……そんなハッキリと言わないでください」

「ああ、ごめん」


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