24-2 十二日目の変化
いつもは連絡通路の北側出口前にある花壇のところでセイジツたちが来るのを待っていたが、今日は違っていた。
セイジツが花壇の縁に座ってあやねが来るのを待っていた。
「ああ、来た! よかった!」あやねの姿を見付けると立ち上がる。
「待っててくれたの?」
「四日前の月曜、隣の市の競技場で会ったとき、次の日、ここで会おうって言ったの覚えてる?」
「あ……えっと……うん」
(そういえば、まったく覚えてなくて、ミシュウさんに教えてもらったんだ)
「次の日、ずっと待ってたんだよ。水曜日は予定があってこれなかったけど、昨日も待ってたんだよ。何かあったの?」
「ずっと待っててくれたの!」
「剣道の県大会が近いんだろう? 部活の練習が忙しかったの?」
「あ、うん、ちょっと」
「そうなんだ。どうしたのかと心配したよ。でも、会えてよかった」
「……ごめん」
「いいよ。あ、これから時間ある? マックでも行く?」
「あ、でも……」
「他のところがいい?」
「そうじゃなくて……彼女に悪いから……」
「彼女? 誰のこと?」
「誰って、桧山さん……」
「里緒奈? 里緒奈は彼女じゃないよ」
「でも、いつも一緒に帰ってるでしょう?」
「それは、アイツの兄貴が幼馴染だから、小さい頃から知ってるだけだよ。一緒に帰ってるのは、アイツの兄貴が事故に遭って入院しちゃったから、送り迎えできなくなって頼まれただけだよ」
「エッ、そうなの?」
「そういえば、アイツの見舞いに行ってくれたんだってね。アイツ、君たちのファンだからメッチャ喜んでてさ。この前見舞いに行ったとき、すごく自慢してきて腹立ったよ」
「あれは、先崎君に頼まれたの。みんなで見舞いに行ってくれないかって言われて。だから、剣道の友達三人と一緒に行ったんだよ」
「先崎に? そうなんだ。先崎知ってるの?」
「ちょっとね。アーモ君と会ったときに会ったんだ」
「ヘェ、そうなんだ。そういえば、今日は一緒じゃないの?」
「あ、うん」
「そうなんだ。会えるの楽しみにしてたんだけどな」
「そうなの? じゃあ、今度連れてくる」
「いいの? 飼い主の超美人な外国のお姉さん、怒らない?」
「あの人……は、飼い主じゃないから」
「そういえば、そんなこと言ってたね。じゃあ、飼い主って誰?」
「ネイルサロンの人だよ」
「ヘェ、そうなんだ。そういえば、ネイルしてるね」
「あ、そう。きれいでしょう?」
「そのネイルをしてもらったんだ」
「うん」
その時、ミシュエルから渡されたト音記号のような黒曜石のペンダントが、急に強い光りを放った。