24-1 十二日目の変化
翌朝、珍しく夢を見ずに熟睡していたらしく、スッキリと起きることができた。
実はミシュエルたちには言ってないが、一週間くらい前から、毎日夢の中にセイジツが出てくるようになっていた。
抱っこしているアーモのことで楽しくおしゃべりしているが、必ず途中から里緒奈が出てきて、セイジツと二人仲良く歩いていく後ろ姿を見て、悲しい思いをするところで目を覚ます。
毎日同じ内容で、同じところで目を覚ましていた。
しかし、今日は夢を見なかったので、不思議と疲れていない。
「あの夢も、例の脱走した生き物がコントロールしてたのかな?」
昨日、ネイルサロンで聞いた話の内容から考えると、十分にあり得ると思う。
「このペンダントがあるから、夢を見なかったのかも」
ミシュエルから貰ったト音記号のような形の黒曜石を見ると、昨日と同じ形なので「変わってない。ということは、セイジツ君に会いにいっていいんだ」
いつもなら会えると思うと顔がにやけるのだが、なぜか今日は、ネイルサロンへ行かないのだと思うと、寂しくなってくる。
「セイジツ君に会いにいけるのに、なぜか楽しくない」
理由はわかっている。
「リエルさんに会えないから……」
「リエルを慕うのは止めないが、お前の相手は人間だ。その点を間違えるな」
ミシュエルに注意されたことで、あやねの気持ちがハッキリすることになってしまった。
「リエルさんに会いたい」
「契約を破棄すると、お前の幸福が一つ消えるぞ」
またしてもミシュエルに言われたことを思いだし「そうだ。契約どおりにしないと、幸福が一つ消えちゃうんだ!」
その時、午前六時半にセットしたアラームがピピピピピッと鳴るので、止めると「どうしよう」悩みながらもベッドから出て、学校へ行く準備を始める。
放課後、剣道の練習が一区切りついて休憩しているとき、例の三人の友人とリエルの話になった。
「あーあ、またあのイケメンと会えないかな?」
「いい男だったね」
「よき目の保養になったぞ」
「あんたは殿様か?」
(そうだ。みんなもリエルさんと会ってるんだ)
「あやねも一緒にいたらよかったのに」
「英語の勉強、頑張ろうって本気で思ったよ」
「メリケン国」
「それはアメリカのことだよ。古いって。どこの国から来たか聞いたの?」
「エディンバラって言ってたよ」
「じゃあ、イギリスの北部だね」
(なんでイギリスなんだろう?)
「お貴族様かも! 公爵? 伯爵? 男爵?」
「目の色変えない」
そして練習が終わると、あやねは友人たちと別れて、セイジツに会いに座山駅の南北連絡通路へ向かった。