22-1 ネイルサロンの秘密
「まず、一番疑問に持ってる僕たちのことから話そうか。
なんとなくわかってると思うけど、僕たちは人間じゃない。
天界に住む、ガイドスピリッツという階級に所属してる、上級の精霊みたいなものだと思ってくれればいいよ。
ガイドスピリッツとは、人間が何かを始めたときに、サポートとしてバックアップする役目を担ってるんだ」
「じゃあ、ミシュウさんもリエルさんも、誰かのサポートとして付いているんですか?」
「そうだよ。僕は君が恋敵と思ってる同級生の里緒奈をサポートしてるんだ」
「エエッ! 本当ですか!」(そうだ。彼女、里緒奈って名前だった)
「だから、臨時に君の担当となった先輩と連携することになったんだよ」
「……そうなんですか。でも、彼女の何をサポートしてるんですか?」
「里緒奈の今の目標を知ってるだろう?」
「彼女の目標? アッ、お父さんに食べさせてあげるためのバイト」
「そう。定食屋の料理をマスターして、海外赴任中の父親に食べさせてあげること。そのサポートをしてるんだ」
「……そうなんですか。そういえば、バイト先で彼女、淳ちゃんて呼ばれてました。なぜですか?」
「それは、料理長の亡くなった娘さんと同じ年だから、そう呼ばせてくれと言われて了承したんだ」
「エエッ……そんな理由があったんですか?」
「でも、そのお陰で料理長が元気になったから、本人も喜んでるよ」
「……彼女、美人の上に優しいんですね。二人のお父さんを喜ばせることをしてるんだから」
「そうだね」
「すごいな」
「じゃあ、話を戻すけど、ある日、天界である騒動が起きてね。外界に出してはいけない、悪さをする生き物が捕獲所から逃げ出していたことがわかって、どうやら、僕たちがいるこの人間界に逃げ込んできたらしいんだよ」
「ここにですか?」
「そうなんだ。そして、運が悪いことに、どうやら僕がサポートしてる里緒奈に付いてしまったようなんだ」
「彼女に! それで、彼女は大丈夫なんですか?」
「一時、おかしい状態になったけど、深く入られる前に追い出すことができたよ」
「ああ、よかった」
「よくない!」機嫌が悪いミシュエルが横入りする。
「そう、よくないんだ。その生き物は、今、君に付いてるんだよ」
「エエエエエエエエッ!」
「あやねちゃん、大声出さないようにね」千奈津が注意する。「前にも言ったけど、ここ、集合住宅だから、上下左右に声が聞こえちゃうんだよ」
「ああ……すみません」
「まあ、私も同じことを言われたら絶叫するけどね」
「その生き物の好物はポジティブなエネルギー。それも誰かを慕うエネルギー。まあ、わかりやすく言えば、片思いのエネルギーが好物なんだ」リエルが説明を続ける。「よくわからないけど、甘いらしいよ」
「それって……」
「だから、あやねを見付けたとき、リエルのサポートからあやねに移動したんだ」
「じゃあ、意識を失うのは……」
「片思いのエネルギーを吸い取られたからだ」
「そんな……」
「しかし、運が良かったと言うべきだ。最初に意識を失ったとき、アーモが一緒にいたからな」