21-2 十一日目のリベンジ
「あやねちゃん、紅茶、ここに置くよ」
「エッ?」
「疲れたでしょう? ゆっくりして」
いつもの横長のソファに座っているので「あ、また意識を失っちゃったんですか?」
「そうみたいね」
「……ミシュウさん! すみません!」いつもの一人掛け用のソファに座っているので立ち上がり、頭を下げると「謝る必要ない」例の白いバインダーを広げてなにやら書き込んでいるので「でも……」ウルウルウル。
「それで、今回の騒動の原因がわかりましたか?」ネイル用のテーブルの椅子に座っているリエルが話し掛ける。
「アッ、リエルさん」
「やあ、大丈夫? ゆっくりしてね」
「はい!」
その光景を見て、千奈津が「あやねちゃん、クッキー食べる?」話に割って入ってくる。
「あ、ありがとうございます。いただきます」
「僕ももらっていいかな?」リエルが便乗すると「もちろん!」千奈津のご機嫌がなおる。
「それで、あれの居場所が特定できましたか?」リエルが笑顔を引っこめて再度聞くと「今回でだいぶ的を絞りこめたよ」
聞き覚えのない男性の声が返事をするので(エッ、 誰?)あやねは部屋の中を見回すが、男性はリエル一人。
聞き覚えのない声の主がわからない。
「あれの居場所が特定できたのなら、どうやって捕獲しますか?」
「それこそ、あやねに協力してもらうしかないだろう」とミシュエルが言うので「エッ、私ですか?」
「あれの狙いがあやねに移ったからな」
「私、なにかから狙われてるんですか?」
「そうだ」
「エエエエエエッ!」
「ミシュウ。どうしていつもストレートにものを言うんだ。相手の気持ちを考えろって、いつも言ってるだろう?」
「……悪かった」
「減点するぞ」
「あやね、私が守るから心配するな」
「アモニスチーフ、その姿でしゃべるのはダメですよ。あやねちゃんが固まっちゃってるじゃないですか」
「ああ、悪かった」ミシュエルの隣に置いてあるクッションの上にいるアーモが謝るので、あやねが凝視する。「本当に、本当にアーモ君がしゃべってるの?」
「そうだ。驚かせて悪かったな」
「……」
「チーフ! あやねちゃん、ちゃんと説明するから、驚かないで聞いてね」リエルがフォローすると「今、話すのか?」確認するミシュエル。
「今話さないで、いつ話すんですか?」
「まあ、そうだな」
「先輩の気持ちはわかりますよ。話したら先輩の株が下がりますからね」
「ケンカ売ってるのか?」
「いいえ。事実を話してるだけです」
「それがケンカを売ってると言うんだ」
「二人とも、今はそんな些細なことで揉めてる場合じゃないだろう?」
「すみません、チーフ」
「先輩」リエルがミシュエルを見ると「……悪かった」仕方なく、という言い方をする。
「では、僕から説明するよ」リエルが、現状をまったく理解できていないあやねのほうを向くと「話して大丈夫?」
「……あ、はい!」