21-1 十一日目のリベンジ
そして、再度セイジツに会いにいけと言われた翌日、剣道の練習を終えてコンビニにアーモを迎えに行くと、座山駅北口の連絡通路出入り口前にある花壇の脇へ急ぐ。
一昨日、ミシュエルに家まで送ってもらったとき、意識を失う回数が多いことと、意識を失う前に気がついた異変がないかを思い出すよう言われていたが、意識を失う前の記憶がおぼろげで、ハッキリしない。
あやねが、セイジツと付き合っているのではないかと思っている同じ学校の彼女が関係してることはわかっている。
(確かに、二人で歩いてるところを見たときはショックだったけど、だからって、意識を失うのは違うような気がする……)
もし、今日もセイジツが彼女と一緒なら、会ったとき、同じことが起こるのではと予測している。
「アーモ君、もしまた私が意識を失ったら、ネイルサロンまで連れてってね」
「ワンワン!」
「……本当に、私が言ってることがわかってるみたい」
剣道仲間の三人の友人には、今回の事が終わったら説明するので、それまで見守っててほしいと話していた。
「とにかく、時間までに着かないと」小走りで駅へ向かう。
待ち合わせ場所に着いたのは午後六時二十分過ぎ。
息を整えて連絡通路の先を見ると、週の中日だが帰宅時間のため、大勢の人が通路を行き来している。
「まだ来てないよね?」バッグからアーモを出すと、抱えて花壇の縁に座る。
「一昨日も確かここで同じように座って、彼が来るのを待ってた……」
忘れていたと思っていた記憶が突然よみがえる。
「そうだ。一昨日もこうやってアーモ君を抱いて、同じここに座ったんだ」
「ワン」
「アーモ君も覚えてるよね?」
「ワン」
「それから、そう、六時半を回っても彼は来なくて……彼の友人たちが来たんだ」
「セイジツの奴、今日も例の彼女のバイト先に迎えに行くから、一緒に帰れないってさ」
「お熱いことで」
「そういえば彼女、今年の夏に海外へ引っ越すようなことを聞いたぞ」
「エエッ! マジで! うわあ、セイジツ、どうするんだろう?」
「奴は陸上で大学の推薦をもらってると言ってたから、日本に残るだろうな」
「そうなると、遠距離恋愛か?」
「どうだろうな。大学の推薦蹴って、一緒に海外へいくってこともあるんじゃね?」
「さすがに親が黙ってねえんじゃね?」
「ああ、だよな」
「そういえば、彼女の兄貴、最近事故に遭って入院してるらしいぜ」
「事故?」
「ああ。けっこう重傷で、しばらく入院するって聞いたぞ」
「じゃあ、引っ越しは延期になるのか?」
「どうだろうな」
「ますます彼女を支えてあげねえといけねえじゃん」
「だよな」