12-2 四日目はお休みだけど
「本当にゴメン!」また全員で頭を下げるので「どうする? あやね」確認する「友人その一」の長身。
「無理に許さなくてもいいんだよ」切り捨てるように言う「友人その二」の小柄。
「ホッといてもいいしさ」別の案を出す「友人その三」のアイドル好き。
「もういいよ。私も同じように、連れていこうとしてるんだと思ったから」
「だよな。俺たちガラ悪く見られっから、なにかボランティアみたいなことやっても、悪いほうに見られちまうんだよな」五人揃って寂しそうに笑うので「あんたたち、けっこういい奴なんだな」
「ちょっと見直した」
「ちゃんと考えてたんだね」
「……俺の言うこと、信じてくれんの?」
「そうだね。悪い事したとみんなで謝りにくるなんて、思わなかったよ」
「なかなかできることじゃないし」
「謝ろうとあやねを探してたんでしょう?」
「あの後、あの犬、ちゃんと飼い主のところへ戻れたのかも聞きたくて」
「大丈夫。ちゃんと家まで送ってったよ」
「そっか。よかった」五人揃って喜ぶので「噂と全然違うじゃん」
「誰だよ、ウソ流してんの」
「見掛けで判断しちゃダメだよね」
その後、用事があると言って彼らが帰っていくと、あやねたちは駅前通り沿いにある、デパートの一階のたこ焼き屋でそれぞれ好みのものを買い、お店前のちょっとした広場にあるベンチに座って食べはじめた。
「みんなで食べるの、久しぶりだね」
「たまにはこういうのも必要だよ」
「一個ずつ交換しよう」「友人その三」のアイドル好きが、あやねのお皿に自分のタコ焼きを一個置くと「お返し」あやねが「友人その三」のお皿に一個乗せる。
この後、近くのファストフード店で飲み物を買うと、一時間近く話をして家に帰った。
帰宅後、夕飯を食べたが、いつもの量を食べることができず、ご飯をお替りしなかったので母親が気付き「今日はご飯、お替わりしないの?」と聞いてきた。昨夜、ミシュエルに、食事の量を制限しないように言われので、注意していたらしい。
「部活のみんなとタコ焼き食べてきたから」と言い訳をしたが、ショックの影響は出ていた。
その後、二階の自分の部屋に入り、カバンを置いて机に座ると、やっぱりあの光景を思い出してしまう。
彼と一緒に歩いていた淳ちゃんと呼ばれる同じ高校の二年生。
そして、ミシュエルと一緒に行った定食屋で、その淳ちゃんがバイトしている。
(どうしてミシュウさんは、私をあの子のバイト先に連れてったんだろう?)
バイトを始めた理由は定食屋のおばさんから聞いて納得したが、それと彼と一緒に歩いてたことがどう関係してくるのか、いまのあやねにはまったくわからなかった。
(彼とはいつ会えるんだろう……)
早く、意識が飛ばないでいられるようになりたいが、どういう結末になるのか、バットエンドにだけはならないように、祈ることしかできなかった。