12-1 四日目はお休みだけど
翌日、放課後の剣道の練習。
「あやね! 集中!」
「アッ、ごめん!」
「今日はなにが引っ掛かってるんだ?」
「うん、ちょっと」
「……今日も早上がりするの?」
「ううん、今日は最後までいるよ」
「よし! それじゃあ、たこ焼き食べにいくぞ!」
「そうだね」
部活終了後、着替えて住宅街の道を歩いていくと、アーモの散歩コースの途中にあるコンビニ前の駐車場に、見たことのあるグループが集まって話し込んでいた。
「あやね、仲良くなった犬を助けたときに絡んできた北条高校の男子たちって、アイツらだろう?」長身の「友人その一人」が小声で話し掛けてくる。
「あっ、そうそう」
「なんでこんな所にいるんだろう? 北条高校って南口じゃん? 北口から離れたコンビニになんでいるんだよ」警戒する「友人その二」の小柄。
「いいから、無視して行こう」アイドル好きの「友人その三」がさっさと歩いていく。
気付かないフリをしてコンビニの前を歩いていくと、北条高校のグループの一人が気付き、仲間に話をすると、こちらへ向かって歩いてくる。
「なんかこっち来るよ。どうする?」最初に気付く長身。
「いいから、無視、無視」さっさと歩いていく小柄。
「早く行こう」関わりたくないアイドル好き。
そこへ、アーモを助けたとき、最初に話しかけてきた中心人物のガラの悪い男子が「えっと、華河、さん?」照れくさそうな顔をして、遠慮がちに声を掛けてきた。
「エッ! 私?」ギョッとしてあやねが立ち止まると「ちょっと、いいかな?」
「あやねになにか用?」
「話なら私たちが聞くよ」
「言ってみな」
友人三人があやねと男子の間に立つと「いや、謝りに来たんだよ!」両手を横に振りながら慌てて言うので「……謝りにきた?」長身の「友人その一」が聞き返す。
「あのさ、この前、ミニチュアダックスを追い駆けてたとき、ひどい言い方して、ゴ、ゴメン!」一緒に追い駆けていたグループの五人が話し掛けてきた男子生徒の後ろに並び、あやねに向かって頭を下げる。
「実はあの時、一匹で歩いてたあの犬を見掛けてさ。仲間の一人が犬に詳しくて、ブラックタンだったっけ?」
後ろにいる痩せて大人しそうな男子に聞くと「うん、そうだよ」と小声で答えるので「ていう種類で、けっこう高値で売られてるらしくてさ。
保護しないと連れてかれるって言うから、みんなで保護して飼い主に注意しようとしたら、なかなか捕まえられなくてさ。
その時君に会って、やべえ、早く捕まえないと連れてかれるって……」
「私があの子を盗もうとしたと思ったの!」
「最初だけだよ! 最初だけ! すぐに君が剣道で有名な、華河、さん、だとわかって、有名人が盗んだりしないだろうと思って、引いたんだ」
「……そうだったんだ」