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アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
20/109

11-2 目撃したのは


 しばらくしておいしそうな匂いが漂ってくると、頼んだ定食が出てきた。


「お待ちどうさま。本日の定食大盛豪華版だよ」ドーン! と豪勢な定食が目の前に置かれる。


「わあ、おいしそう!」


 山盛りの青椒肉絲(チンジャオロースー)に鶏のから揚げとマカロニポテトサラダ、大盛のご飯と、豆腐と薄揚げ、わかめの赤だし味噌汁。


「私のはもう少し掛かるだろうから、先に食べろ」


「はい! いただきます!」目の前の箸立てから箸を取ると大盛のごはん茶碗を持ち、おかずの青椒肉絲(チンジャオロースー)から食べはじめる。


 その後、ミシュエルが注文した料理がくると、器用にお箸で麺をすするので、隣で見ているあやねは、中身は日本人? と思いつつ、少し濃いめの味付けに「おいしい!」満足しながら食べていく。


「いやあ、いい食べっぷりだね! そんなにおいしそうに食べると、おじさんも追加したくなっちゃうよ」


「お嬢ちゃん、すごいな」

「俺も同じ定食を注文しようかな」


 周りにいる客たちからさまざまな声が掛かる。


 その後、きれいに食べ終わると「メッチャおいしかったです!」


「本当に全部食べちゃったよ。すごいね」驚く店のおばちゃんが「そういえば、お嬢ちゃんは、剣道の都大会で優勝してるんだって?」


「どうして知ってるんですか!」意外なことを聞かれて固まるあやね。


「ほら、厨房で料理を作ってる子がね、自分が通ってる高校の超有名人だって、さっき自慢してたんだよ」汗を掻きながら鍋を振って料理を作っている例の淳ちゃんを指すので「そういえば、どうしてここでバイトしてるんですか?」と聞くと、おばさんは淳ちゃんを見て話しだした。


「なんでも、父親が海外へ仕事で行ってて、何年も帰ってきてないそうなんだよ。


 先月、スマホの画面に映像が映るやつで父親と話してたら、うちの「とんかつカレー定食」が食べたいと言ったらしくてね。


 バイト代を貯めて、今年の夏休みに父親のところに突撃訪問して、ここの「とんかつカレー定食」を作って驚かせたいと言って、先月、バイトさせてくれと言ってきたんだよ」


「……そう、なんですか」


「それにしても、お嬢ちゃんといい淳ちゃんといい、近頃の高校生は立派だね。おばさん、感心しっぱなしだよ。お嬢ちゃんも毎日欠かさず練習してるんだろう? 都大会優勝なんて、おいそれとできることじゃないからね」


「いえ……私なんか、彼女の心意気に比べたら……」


「こんなところで自分を卑下(ひげ)するな。おばさんが偉いと言ってくれてるんだぞ。それを否定するのか?」


「そんなことない! ありがとうございます!」


「頑張んなよ!」

「はい!」


「じゃあ、そろそろ行くぞ」ミシュエルは、伝票を取るとレジへ向かう。



「ご馳走さまでした!」あやねが声を掛けると「またおいで!」笑顔のおばさんと他のお客さんたちに見送られ、店から出ると、道路を渡った向かいの自販機でお茶と炭酸飲料水を買い、その場で飲む。


「ミシュウさんは、どうしてあの子があの定食屋でバイトしてることを知ってるんですか?」


「内緒」

「エエッ!」



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