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アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
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8-2 初日の行動

 

 その頃、あやねは……。


「ハアハア、南口の、デテーラって、ここで、いいんだよね?」走ってきたので息が少し上がっているが、入り口横の看板を見て確認する。


 何本もの路線が乗り入れているターミナル駅の南北連絡通路を、お目当ての彼を待っている北口から入って南口に出ると階段を下り、細い道路を渡った先の、向かいの雑居ビルの一階にお店の入り口がある。


 時々、部活の帰りに友達と寄ることがあるから知っているはずなのに、今回は特別な理由で来ているので、少し緊張していた。


 駅近くだけあって中に入ると注文待ちの列ができていて、レジ向かいのカウンター席は満席。


「ほかの席に座るしかないけど、どうしよう」チラッとカウンター席を見回すと、ゲームに夢中でしきりに指を動かしている大学生に見えるチャラ男や、ゆっくりトーストを食べる、少し疲れた感じの中年のサラリーマンなど、すぐに席を立つような人は見当たらない。


 とりあえず注文の列に並び、言われたとおり飲み物を買うと、受取場所へ移動してカフェオレができるのを待っている間に、運よくカウンターの真ん中に座っていた仕事帰りらしい女性が席を立ったので、座ることができた。


(ラッキー! よかった!)


 ミシュウとの約束を守れたので、ホッとするとバッグを椅子の背に掛けて座り、携帯を見ると午後七時五分。「ちょっと遅れちゃった。大丈夫かな?」


 何気なく周りを見回すと、左斜め奥にある四人掛けのテーブルに、北条高校の制服を着たグループが座っていて、その中の数名は見たことがある顔。


「確か、彼といつもつるんでる男子たちだ。なんでここにいるんだろう? 彼はいないみたいだけど」


 席が全部埋まっているので、今、席を立ってどこかに行っている人はいない。


「何の話をしてるんだろう?」


 気になって耳を澄ますが、店内に掛かっている音楽がうるさくて聞こえない。


(いつもは気にならないのに、どうして今日に限ってうるさいのよ!)


 席を移動しようにも、彼らがよく見える左端のカウンター席には空きがなく、近くのテーブル席に移動しようと思ったが、ミシュエルから、今日はカウンターに座れと言われている。テーブル席に座るのは明日。


 さんざん迷った挙句、ここで彼らから情報を取らないといけないと思い、独断で移動することに決めて席を立ったとき、空いているテーブル席にカップルが座ってしまった。


(言われたことを守って、今日はカウンター席に座ってろってことなんでしょう!)

 

 絶望感に打ちひしがれながら、ふて腐れて座りなおすとお腹が空いたので、追加でチーズトーストを頼むと、後ろのテーブル席が気になりながらも、熱いトーストをほおばる。


(おいしい!)


 いつもはミルクティーしか頼まないので、こんなにおいしいチーズトーストをどうして食べなかったのかと、後悔しながらも、最後までおいしく食べることができた。


 そして、午後八時前になると、北条高校のグループが店から出ていった。


(ミシュエルさんは、私に彼らがここに居ることを教えるために行けと言ったの? それとも、彼らに、私の存在を覚えさせるためにここに行けと言ったの?)頭を抱えるあやね。


 彼女には、ミシュエルの考えがまったく分かっていなかった。



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