6 謎の美女
(すっごい美人! スーパーモデルみたい! なんでこんなところにいるんだろう? 千奈津さんとどんな関係なんだろう?)
目を見開き、あやねが驚いて固まるので「ミシュウ! お客さんを驚かせたらダメだっていつも言ってるでしょう! あやねちゃん、固まっちゃったよ!」
「なにを固まる必要があるんだ。おい! 」
「あ、は、はい!」
「一昨日、アーモを、盗人寸前の生意気な小僧連中から助けてくれたそうだな」
「は、はあ、まあ」
「その礼だ。素直に受けとれ」
「……はい……ありがとう、ございます」
(外国人なのに日本語ペラペラ。どこの国の人だろう? アメリカ? フランス? イギリス?)思い付く外国を考えても区別がつくわけもなく(そもそも、人間のような気がしないのはなんでだろう?)不思議なオーラをまとっているので、謎としか言えない。
ツヤツヤのウェーブが掛かった長い金髪に白すぎる肌。スカイブルーの瞳に長身で抜群のスタイル。
年齢は見たところ二十代後半か三十代前半くらい。
今日は白いミニのスーツを着ている。
「それじゃ、あやねちゃん、また明日ね。そうだ。明日は部活早く上がれる? ネイルやるの時間が掛かるから、五時半くらいに来てくれると助かるんだけど」
千奈津が話を進めるので「あ、はい。わかりました。三十分くらい早く上がる感じだから、大丈夫です」
「良かった。くれぐれも、ここのことは他の人に言わないように、気を付けてね」
「あ、そうでしたね。わかりました」
翌日の剣道の練習。
「あやね。調子戻ったみたいだね」安心する長身。
「うん。心配かけてごめん。何とか大丈夫」
「でも、あんまり寝てないんだろう?」まだ心配な小柄。
「まだちょっと、気になっちゃって」
「でも、一体何を見たの? あんなに落ち込むなんて普通じゃないよ」推しを心配するアイドル好き。
「……うん、まだ、思い出すと、衝撃が蘇る……」ウルウルウル。
「あやね、正直に言うんだ! どこのボケナス男なんだ!」
「エッ、どうしてわかるの?」
「やっぱり男問題か。そうだと思った」
「やっぱり?」
「わかるよ。いつも座山駅の連絡通路出口で、誰か来るのを待ってるだろう?」
「あ、そ、そ、そ、それは……」
「そいつは誰なの?」
「そいつが何かしたんだろう?」
「何があったの?」
「……みんな、ありがとう。心配かけてごめんね」ゴシゴシと涙をふく。
「あやね……」
「半月、半月の我慢」
「ハァ? 何が半月なんだ?」
「何でもない。ごめん。今日はちょっと早く上がる」
「本当に何があったの? あやねが部活早く上がるなんて、今までなかったよ」
「ちょっとね。行かなきゃいけないところがあるから」
「どこ行くの?」
「この前、かわいいワンちゃんと知り合ってね。その仔のところに行くの」
「あやね、犬好きだったっけ?」
「この前から犬好きになったの」
「どういうこと?」
「ちょっとね」
(アーモ君のことは話しても大丈夫かな? あのネイルサロンのことを話さなければいいんだよね)