54-2 次の契約者
「私が監督省に行って直談判してきてやったことを、忘れたのか?」
「私が、お前のミスの尻拭いをしてやったことを忘れたのか?」
「わかってるから、わざわざ降格処分を取り消してもらいに行ったんじゃないか!」
「だから、私に恩を売ったというのか?」
「……助けるんじゃなかった!」
「もう遅い」
「あの、千奈津さん。一つ聞いていいですか?」
「アーモ君が誰なのかは、想像して」
「エエエエエッ! それって」
「願い事は書けたか?」
「あ、はい。一応書きました」
「一応か」千奈津から契約書を受けとり、願い事欄を読んでいくと突っかえし「甘っちょろいことは書くなとさっき言ったばかりだろう! 契約したくないならそう言え!」
「ミシュウ!」
「彼女を追い返したら、即、落第決定だぞ」
「……どうしてこいつを助けたんだろう?」睨むミシュエル。
「その三。ズバッと書かないとダメだよ」千奈津がアドバイスすると「ズバッとって……」
「ほら、恥ずかしがってたら何も手に入らないよ」
諭して書き直しさせると「まったく、どうしてこの国の人間はまどろっこしい書き方をするんだ。イライラするような遠回しの言い方をせず、初めから要望を簡潔に書けばいいだけだろう。チィ、ペン」手を出すので渡すとサインをし「チィ。彼女用のネイルチップを作ってやれ」
「わかった。じゃあ明日、剣道の練習が終わったらここに来て。ああ、あやねちゃんとは一緒に来ないでね」
「どうしてですか? ネイルチップを付けたらすぐにバレるから、一緒にいくと言うと思いますけど」
「実はあやねちゃんとの契約が完了してるから、その三と入ってくる入り口が違うんだ」
「入り口ですか?」
「そう。あやねちゃんは、その三と同じ入り口から入ってくることができないんだ」
「入り口って、あそこですよね?」玄関を指すと「そうだよ。その三も、明日ここに来たらわかるから」
「はあ、そうなんですか……わかりました」
「じゃあ、気をつけて帰ってね」
「はい」立ち上がると「その三、ちょっと待て」ミシュエルが止める。「明日、契約期間中の行動について説明するから、夕飯を買ってこい」
「ああ、わかりました」
「それと、辛気臭い顔をするのはやめろ。お前が一人残ったのは、お前の相手が別の場所にいるからだ」
「別の場所ですか?」
「そうだ。だから、もっと自分に自信を持て」
「私の相手ってどんな人なんですか!」勢い込んでミシュエルの前にいくと「私が教えると思うのか?」
「……エッ?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
第一章、本日完結となります。
第二章は書き終り次第Upする予定ですので、その時にまた読んでいただけると嬉しいです。