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アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
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53-2 契約の完了

 

「でも、契約期間が残ってますよ?」

「今回の契約更新は、例の厄病虫の事件で期間内に契約が完了しなかったからでしょう?」

「まあ、そうですけど……だからって」

「ミシュウ、あやねちゃんが三連覇したって喜んでたよ」


「試合会場に来てたんですか!」

「そうみたいだね」

「どうして声を掛けてくれなかったんだろう」

「セイジツ君たちが来てたでしょう?」


「……もう、ミシュウさんたちとは会えないんですか?」

「……そうだね」

「どうしてもダメですか?」

「私からは何とも言えないんだ。ごめんね」


「……じゃあ、私が会いたがってたって、言っといてください」

「わかった。言っとくよ。それと、契約の最終日はネイルチップ取るから、サロンに来てね」

「……はい」

 あやねは千奈津と別れると、エレベーターに乗って降りていった。


 翌日から、あやねと友達その一、二、三は、翌月に控えた陸上の県大会に出場するセイジツをサポートするため、部活終了後、隣の市の市営競技場へ行き、桧山や先崎と一緒に、同じように県大会に出場する北条高校陸上部の選手たちの手伝いを、二人のマネージャーと一緒にこなしていた。


「セイジツ、彼女が旋律(せんりつ)高校剣道部主将で三連覇の華河さんだなんて、知らなかったぞ!」座山駅南口のデテーラで、桧山の妹の里緒奈のことをセイジツの彼女だと噂していた部活仲間が羨ましそうに言うので「お前ら、変な噂してなかったか?」


「別に。してねえよな?」

「ああ、全然してねえよ」

「してたのか」


「エッ、なんでわかんの?」

「やっぱり」

「またひっかけに引っ掛かった!」

「学習しろよ」

「うわあ! ショック!」


「その二。指どうしたんだよ。()れてんぞ」先崎が選手たちの汚れたシャツをバケツに入れていると、左手の中指を庇いながらシャツを入れるその二に気がつく。


「ああ、今日、剣道の防具を片付けるときに、ロッカーの扉に挟んじゃったんだ」

「なんでそのままにしてんだよ! 骨折してねえか? マネージャ! 救急箱!」


 奥のバッグから取りだす救急箱を受け取ると、その二の腫れた指の具合を見て「折れてはいねえみたいだな」器用に湿布を貼り、包帯を捲いていくと「しばらくは重いものを持つなよ」と言って、その二のバッグを持つ。


「いいよ。大丈夫だから」

「何言ってんだよ。県大会で三位になったんだぞ。それなのに、指をケガして練習休んでますなんて、ダメだろう」


「私の不注意だったんだから」

「疲れてんじゃねえか? 大会前日まで猛練習してたんだから」

「それは、そうだけど」

 その後、荷物を持つ先崎と一緒に帰途に就くその二を、遠くからその三が見送る。


 自由解散となったこの日、午後八時半ごろ、旋律高校と座山駅の中間にあるコンビニの駐車場で、一人、好物のクレープを食べているその三がいた。


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