表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
106/109

53-1 契約の完了

 

 いろんなことが頭の中を駆け巡ると、一人、話の輪から外れるので「あやねちゃん、どうしたの?」食後のお茶を入れている千奈津が声を掛けてくる。


「千奈津さん。ミシュエルさんはまだ戻ってこないんですか?」

「エッ?」手を止めるので「戻ってきたら、連絡をくれるんですよね?」

「ああ、そうだったね」


「県大会のところまでしか聞いてないから、明日からどうしたらいいのか聞きたいんです」

「二回目の契約も、残すところあと五日だっけ?」

「はい」


「前回は長く感じたけど、今回は日にちが過ぎるのが早く感じるね」

「やっぱり県大会があったから。ずっと練習しっぱなしで、こっちのほうを忘れてたくらいです」

「ある意味、いい事だと思うよ」

「みんな、同じ目標に向かって頑張ってたから、すごく楽しかったです」


「そういえば、あの彼」あやねの向かいの椅子に座っている桧山を見て「彼は男子剣道部の主将なんでしょう? いい練習相手になったんじゃない?」


「そうなんですよ。北条高校の剣道部の部員が練習相手になってくれて、助かりました」

「北条高校には女子剣道部はないの?」

「ありますよ。今回の大会は三位でした」

「あ、やっぱり強いんだ」


「はい。本当はライバルなんですけど、一緒に優勝目指そうって仲間意識が出てきて、さらに頑張れたんです」

「そんなこともあったの? ビックリ」


「厄病虫の事件は本当に大変だったんですけど、その後の結束って言うのかな? みんなが団結できるようになって、それが少しずつ広がったって感じです」

「大変だった分、反動が大きかったってところかな?」


「そうですね。普段起きないことが起きたから、その体験をした者の仲間意識っていうのかもしれないです」


「セイジツ君も先崎君も、剣道部じゃないのにいろいろ手伝ってくれたようだし」

「セイジツ君は来月陸上の県大会があるのに、私たちの大会のほうが先だからって、練習の合間をぬって手伝いに来てくれて」


「セイジツ君とはいい感じみたいだけど」

「はい。大会前に、ちゃんとお付き合いしようって、言ってくれたんです」

「マジか!」

「……はい」

「もちろん、オケ、だよね?」

「……はい」


「よし! 一丁上がり!」

「上がってないです」

「いやあ、めでたし、めでたしじゃん!」

「ありがとうございます。だから、ミシュエルさんにお礼が言いたいんです」

「そういうことか」


 二人で話をしている間に他のメンバーがカラオケに行く話をしていて「じゃあ、これから座山(すわりやま)駅南口のカラオケに行くぞ!」先崎がテーブルの上を片付けだすと、他のメンバーも片付けはじめる。


「ああ、適当にまとめてくれればいいから」千奈津がキッチンからゴミ袋を持ってくると、分別して入れていく。


 一通り片付け終ると「千奈津さんも一緒にどうですか?」その一が声を掛ける。

「ありがとう。でも、これから別の予定が入ってるんだ。次のとき、声を掛けてくれる?」

「わかりました。じゃあ、ご馳走さまでした」


 お礼を言って外に出ると「あやねちゃん、ちょっといい?」千奈津がドアの前で引き止めるので「はい。あ、先に行ってて」セイジツたちに声を掛けて戻ってくると「なんですか?」


 千奈津は他のメンバーがエレベーターで下に降りるのを確認すると「実はね、ミシュウ、戻ってきてるの」

「エエッ! 本当ですか! でも、今日はいないですよね? 出掛けてるんですか?」


「あやねちゃん、ドアを見てくれる?」

「はい。ドアが何か?」

「ドアノブ。いつもと変わらない?」

「はい。変わりませんけど……あ!」


「気が付いた?」

「そうだ! ドアノブが羽の形をしてない! どうしてですか?」

「それはね、あやねちゃんとの契約が完了したからだよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ