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アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
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52-2 県大会

 

 大会後、約束どおり、千奈津がネイルサロンで優勝記念パーティを開いてくれた。


「優勝のトロフィー持ってきました!」あやねがドアを開ける千奈津に見せると「すごい! これが本物のトロフィーなんだ。三連覇おめでとう! さあ、上がって」

「お邪魔します!」


 順番に中へ入ると、いつも座る横長のソファ前に置いてあるガラスのテーブルに、パーティ用の豪華な料理がたくさん置いてあるので「千奈津さん、この料理どうしたんですか?」


「お客さんの中に、お兄さんが洋食屋さんで働いている人がいてね。優勝パーティのことを話したら、優勝したら無料で料理を作ってくれる話になって、本当に作ってくれたんだよ。ほんの十分ほど前に持ってきてもらったばかりなんだ」


「誰なんですか? お礼を言わないといけない」と言いつつ、どれから食べようかと、目は料理の品定めを始めている。


「あやねちゃん、どれから食べようか考えてるでしょう」

「エエッ! わかりますか?」

「うん。誰でもわかると思う」

「アハハハハッ、すみません。お腹すいてるので、つい、目が……」


「まったく、友達はすでに箸を持ってるし」

「その一、二、三、いつの間に!」


「じゃあ、トロフィーはネイル用テーブルに置いて。ちゃんと専用の置き場を作ってあるからね」

 ベルベットの赤い布が敷かれ、周りにいろんな造花がこんもりと置かれている。

「あとで写真を撮らないと」


「男子君たちも、荷物はキッチン横に置いて、空いてる椅子に座って」


 あとからあやねたちの荷物を持ってくる桧山たちに声を掛け、お皿と箸を渡すとグラスに炭酸飲料を入れ「では」全員グラスを持ったところで千奈津が声を掛ける。「前代未聞の三連覇を達成した特進大学付属旋律(せんりつ)高校、女子剣道部の偉業を(たた)えて、かんぱい!」

「かんぱい!」


 その後、ネイルの仕事で試合を見に行けなかった千奈津に、出場者側と応援側の両方の話をして大いに盛り上がり、料理も大食漢ぞろいのため、あっという間にお皿がきれいになっていく。


「このハンバーグ、メッチャおいしい!」げんこつ大の丸いハンバーグに感動するセイジツ。

「これさ、ローストビーフって言うんだろう?」先崎がゆっくりと口に運ぶ。

「セイジツ! それは俺のローストチキンだぞ!」セイジツの手から取りもどす桧山。


「男子君たちは、みんな肉に行くんだ」食べそこなう前に千奈津も頑張って肉の確保に努める。


 しばらくはおいしい料理の話で盛り上がったが、やはり、あやねにはミシュエルたちがいないのが気になっていた。


 ミシュエルがいつも座っていた一人掛け用のソファにはその一が座り、リエルが座っていたネイルテーブルの椅子にはセイジツが座り、犬のアーモ君が寝そべっていたクッションが置いてある所には、スチールの椅子に座るその二が、深皿に入ったクリームシチューを無心で食べている。


 再契約したあやねの指には更新したネイルチップが付いているが、再契約後、まだ一度もミシュエルと話をしていない。

(そういえば、県大会の日までのことしか聞いてないけど、明日からどうしたらいいんだろう?)


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