51-1 県大会
そして県大会当日は、なんと朝からゲリラ豪雨で一面真っ白となり、交通機関が軒並み止まってしまったので、大会が中止になるかもしれないという状況だったが、あやねたちの念力が効いたのか二時間後には快晴となり、雲一つない青空となった。
「一時はどうなるかと思ったけど、我々の三連覇を阻むものはなし!」その三が竹刀を青空に向ける。
「それにしても、今年は豪雨が多いね。昨日も夜中に雷も鳴ってて、途中で起きちゃって寝れなくなったよ」少し眠そうなあやね。
「桧山君と先崎君、少し遅れそうだって。今、ラインがきた」携帯を見るその一。「線路が水没してるから迂回するんだって」
「セイジツ君からもラインきたよ」あやねも携帯を見る。「道路に街路樹が倒れて通行止めになってるから、こっちも迂回するので遅れるって」
「ここに境界線が見える」その三が、自分とあやねたちとの間に手で線を引くと「その三、我がいるであろう。気落ちするな」
「その二。同士」
「またやってるよ」
「そろそろ、あんたたちも彼を見つけな」
「その言葉、どれほど傷つくか知っておろうな」
「知らんわ」
「時代をさかのぼってない?」
その後、開会式が一時間遅れたものの剣道の試合は滞りなく進み、あやねたちも順調に勝ち進んでいく途中で、桧山たちが合流した。
「順調に勝ち進んでるな」トーナメントボードを見る桧山。
「三連覇はまだどこも達成してないんだろう?」セイジツに聞かれ「そうだよ。だから、私たちが勝つと初になるんだ」
「それ、すげえ」
「その二、その三。昼飯持ってきたぞ」両手に紙袋を持ってる先崎が声を掛ける。「ボランティアで手伝いに行ってる給食センターの人が、是非、三連覇して市の名前を有名にしてほしいって、無償で作ってくれたんだ」
「いいの!」紙袋の中から出てくる料理が豪華なので、目を輝かすその二とその三。
「すごいだろう? たくさん食べて、絶対勝ってくれよ!」
「いただきます!」
「おいしそう!」
二人並んで目の前のおかずを食べていくと、あやねとその一もテーブルに座って食べはじめるが、四人とも大食漢なので、あっという間に大量のおかずがなくなっていく。
「すごいとしか言いようがない」呆気に取られるセイジツ。
「まあ、これくらいは普通だよ」男子剣道部の主将を務める桧山。
「足りたか?」心配な先崎。「かなりの量を持ってきたんだけど」
「おいしかった! ありがとう!」満足顔のその二とその三。
「今度お礼を言いに行かないといけないね」気分よくお茶を飲むあやね。
「そのお礼は三連覇だよ、あやね」その一が言い返す。
そして、午後から行われた個人戦は予想通りあやねが優勝、三位がその二となり、団体戦では決勝戦で苦戦したが、最後、あやねの一本で優勝を勝ちとり、個人、団体で三連覇を達成した。