49-1 アモニスからの説明
千奈津がアモニスに味噌汁を持ってくると「あやねちゃん、こっちに移動して」アモニスの隣を指定し、テーブルにスイーツといつもの紅茶を持ってくる。
「ありがとうございます。千奈津さんは、いつもお客さんからおいしいスイーツを貰うんですね」アモニスの隣のソファへ移動すると「いろんなお客さんがいるからね」千奈津がスチール椅子を持ってきて、アモニスの隣に座る。
しばらくは紅茶とお菓子を食べていたが、アモニスが食事を終えると「アモニスチーフ、聞きたいことがあるんですけど」声を掛ける。
「昨日のことだろう?」食後の紅茶を飲みながら聞き返すので「あ、はい、そうです」
「まあ、今回はお前をはじめ、数名の人間に迷惑を掛けてしまったからな」
「でも、あれはチーフの責任じゃないし」
「私の部下が関わった事件だ。私の監督不行き届きと言われても仕方ない」
「……責任者って、大変ですね」
「まあな」
「それで、どうして昨日、定食屋へ行く前、チーフとミシュウさんが途中で別行動することになったんですか?」
「あれは、ミシュエルの作戦だったんだ」
「……作戦?」
「昨日のことは、すべてお芝居だ」
「……あの、意味が解らないんですけど」
「理解できないだろうから、わかるところから説明する」と言って、隣のあやねのほうを向くので「あ、はい。お願い、します」リエルとは違う、大人の雰囲気のアモニスの顔を間近で見ると(きれいな顔。瞳の色がきれい)見惚れてしまう。
「アーモ君、顔が近いよ」千奈津に注意され「ああ、悪かった」姿勢を戻すので(千奈津さん。余計なこと言わないでください)という視線を送ると、千奈津は視線を逸らし(ゴメン)というサインなのか、少し俯き「あやねちゃんにちゃんと説明してあげて」とフォローを入れる。
「そうだな。どこから話せばわかりやすいか」アモニスは少し考えると「捕獲所から逃げ出したと言われた「フォ、アモリス」のところからがわかりやすいだろう」
「あの厄病虫は、そんなきれいな名前なんですか?」
「恋心の盗人という意味だがな」
「……前言撤回します」
「あの虫を盗んだのはお前も知ってるとおり、捕獲所の職員だった。これは変わらない。問題はその先だったんだが、その職員と幼馴染だったのが、私の部下の一人であるセスだったんだ」
「セスって、昨日、セイジツ君をさらっていった先崎君のサポート役ですよね?」
「そうだ。アイツもとんだとばっちりを食った被害者の一人だったんだがな」
「あの人が被害者の一人ですか?」
「犯人は、幼馴染が担当する人間の近しい人物に、例の「フォ、アモリス」を隠し、万が一、見付かったときは、セスに罪が被るように仕組んでたんだ」