八話「そしてデザータムへ」
八話「ケルベロスとは、そしてデザータムへ」
急いで都市デルタを抜け出した二人と一匹は、南に向かって走り、かなり離れた森の中まで着いたところで夜を迎えたので野宿していた。
「これからヨロー!ケロちゃんー!」
「ワウ!」
「さーて、これからどーするー?」
ルーミがケロちゃんとあいさつをした後に問いかけてきた。
「とりあえず、この大陸から出るのが最適だと思うんだよね」
「ふむふむ」
「この大陸は都市デルタを中心として軍が全ての街、村を管理しているから、この大陸に居続けるのは得策じゃない」
しかし、この言葉の意味を少し言い換えると、どこにも逃げ道はないという意味にもなる。それはルーミも理解しているようだ
「つまり、強行突破で船を乗っ取ろうというわけだねーリツカくーん!」
「そ、そこまで言ってないけど…でもやるしかないか…」
船、魔法動力で動く海上移動用の乗り物、本で読んだことがある。乗ってみたいと思ってはいたが、まさか奪って乗ることになるなんて…
「めーあんだね!だいぶ南まで来たから、南の街、デザータムまでいこっかー」
このノーザンレイ大陸は南に行けば行くほど、気温が高くなり、砂漠地帯が多くみられるようになるという。砂漠越えに水を貯めておきたいのと、夜の急激な気温の変化に耐えれるような対策も必要だ。
「ふっふーん!天才ルーミ様はこんなこともあろうかと大量の水と、もこもこオフトゥン!を持ち歩いているのだー!」
ルーミはどこからともなく、水とオフトゥンを出した。
ルーミは本当に天才のようで、自分だけが自由に使える空間、とやらを魔法によって作り出したらしい。自分だけがその空間を好きに使うことができ、好きな時に呼び出すことができる。その空間は東京ドームの20%くらいのスペースはあるらしい。ところで東京ドームってなに?
「さすが天才ルーミ様!それなら空を飛べる魔法とかないの?」
「ごめーん!風魔法は、せんもんがーい!」
「水は?」
「せんもんがーい!」
「おやすみ」
「ちょっとー!なんでもできるわけじゃないのー!」
「バウワウ…」
ケロちゃんも呆れた様子で寝た
翌朝
目が覚めると、ルーミが私の腕にしがみついて寝ていたことに気付いた。出会ったばかりなのに距離が近すぎる。でも悔しい。すごくかわいい。
「ほらルーミ、起きるよ」
「ふーん…」
少し鳴くとまた寝た。すごくかわいい。襲いたくなる。
心を鬼にしてルーミを起こした。かなり寝起きが悪いみたいで、叩いても10分くらい起きなかった。
「おはよーリツカー」
「うん。おはよ。準備したら行くよ」
「ほーい」
「わふー」
私たちはのんびり談笑しながら南に向かって歩いていた。
「ところでケロちゃん、どんどん大きくなってる」
そう、ケロちゃんは出会った頃は、普通の犬のサイズで、マルベール宅の番犬達より一回り小さかったはずだ。気づけばその番犬達より少し大きくなっている。
「さすがケルベロスだねー」
「ケルベロスの事、知ってるんだ」
「もっちろーん!なんたって、せーじゅーだからねー!」
「聖獣?どういう意味?」
「んー人間が崇める存在で、人間の事が大好きな生き物ってこと!」
「今では害獣指定されてるって...」
「ルーミ達カタルシス族の神獣だからねー」
「ちょ、ちょっと待って、カタルシス族って...?」
「自分の正体、やっぱ知らないんだーリツカは」
「うん。知りたいから教えて」
ルーミは鼻を高くして話していった
私やルーミのような浄化の力を持つ人間はカタルシス族と呼ばれていたらしい。
数百年前、この浄化の力は、ウイルスに対抗する力として、色んな人の病気を治すために使われていたらしい。そして田舎暮らしだったカタルシス族は有名になり、いつしか国の中心でみんなから頼られる存在となった。
しかしそれをよく思わない人たちがいたらしい。カタルシス族の周りで様々な生物を魔物化させ、カタルシス族は悪だという風にでっち上げられた。カタルシス族は人口が少なかったため、兵士の数の暴力には勝てなかった。それからというもの、迫害を受けたカタルシス族は、身を潜め、黒幕の討伐のために力を蓄えている。らしい。
「ひどい話だね」
「ねー」
「じゃあ、ルーミはカタルシス族の隠れ場所を知ってるの?」
「しらなーい!」
ガクッ ここまで詳しいのに知らないのか
「じゃあ、親とか兄弟とかは?」
「いなーい!みんなやられちゃったー」
「あ、ごめん…」
「いーの、いーの!こうしてまた仲間に会えた!」
ルーミはいきなり抱きついてきた
「助けることができて良かった。リツカ」
ルーミはカタルシス族であることを隠しながら、他の同族が捕まった時一緒に脱出する目的でデルタの牢に入っていたのだ。嬉しすぎてお涙があふれ出た
「そーれーに!リツカに、なーんか希望を感じちゃったんだよねー」
「私に?なんで?」
「勘ー?このやばいじょーきょーを救ってくれそーな感じ?」
そういわれるとますます嬉しくなった。気付けば私が抱きしめ返しをしていた
かなり歩くこと数時間が経ち日も暮れてきたころに南の砂漠地帯まで着いた
「あっつーー」
ルーミはすぐさま軽装に着替え、汗を拭きとっていた
「デザータムまではまだかかるのかな」
「んーー行ったことないからなー」
そういいながらのんびり歩くと、すぐさま街が見えてきた。
「おおーきっとあれだー!」
「結構近かったね。助かったあ」
「わん!」
デザータムは海に面した街で、さらに昔から代々王族がこの街を統制している。そのため、軍の影響力がかなり低いのが特徴である。私たちにとって絶好の街というわけだ。とはいっても軍は駐在しているし、警戒はしなければならない
「今回はこのあたりで休もっか」
「そーしよー」
デザータムの中の様子を探りたかったが、もう夜なので、近くで野宿することに
「はい。どうぞ」
「おおーおいしそー!」
私は野宿用の調理セットから、なんとか野菜スープを作り、おにぎりも作った
「リツカは、いー奥さんになれるねー」
私たちは腹ごしらえを済ませると、明日に備えてすぐに寝た
そして航路確保のため、デザータムに向かうことにした。
fin
リツカ レベル18 Dランク
戦闘スタイル:剣士(熟練度55)体術(熟練度35)
スタミナ:600
魔力:85
物理攻撃:260
物理防御:130
魔法攻撃:80
魔法防御:250
俊敏:380
反応:320
ルーミ レベル18 Dランク
戦闘スタイル:魔術師(熟練度65)
スタミナ:450
魔力:230
物理攻撃:85
物理防御:110
魔法攻撃:280
魔法防御:280
俊敏:220
反応:170
ケロちゃん レベル17
戦闘スタイル:ケルベロス(熟練度35)
スタミナ:550
魔力:110
物理攻撃:240
物理防御:110
魔法攻撃:220
魔法防御:110
俊敏:375
反応:320