第二話「浄化と旅立ち」
第二話「浄化と旅立ち」
「に、逃げるよ!お父さん!」
私はお父さんの身体を支えながら全力で教会から飛び出した。
「はは。すごいなリツカは。父さん抱えてもこれだけ逃げれるのか。」
お父さんは私の肩から離れた。
「ちょっ!?何してるの!」
「父さんはまだやる事があるんだ」
お父さんの左手が光り、泡のようなものが浮かんできた。魔術で、みんなを守ろってこと?
「やめて!私が戦う!」
「いいから、見ていなさい!!!」
「っ!!?」
初めて怒られた。初めてお父さんが声を荒げるところを見た。
「はぁぁっ!」
お父さんの左手の光が村人だった魔物に降り注いだ。
「がぁぁぁっ!」
魔物たちは村人の姿に戻った。
「えっ!ええっ!?いまのは…!?」
「浄化術だ」
「た、たしか狂変病を治す手段ってないんじゃ…」
(グシャッ!!)
私が驚いて油断しているその刹那、目の前で大事な人の身体が大きく抉られた。胸から斜めに太ももあたりまでザックリといった。
「お父さんっ!!!」
私はすぐさま飛び出し、魔物の首を両足で挟み、大きく捻った。魔物は即死し、ふらっと倒れた。
「こ、ころしちゃあ…いけないよ…リツカ…」
私はお父さんに駆け寄り、自分の服をちぎっては止血に使った。もうほぼ下着姿だったが、何も気にしなかった。
「ねぇ…そんなことより…血ぃ!止まって…!!」
「聞いてほしい。リツカ…」
「な、なに…?」
「狂変病は治すことができるんだ。ただ…ごふっ!…極端に治せる人が少ないんだ…」
もうお父さんの血は止まらなかった。お父さんのためにも話を聞くことにした。
「リツカにもできる。父さんの力もあげるよ」
リツカの身体が光に包まれた。
「10年前リツカを拾った時…全身がこの浄化の光で包まれていた…」
「私たち、浄化の力を持つものたちは、あるものの陰謀によって、葬られているんだ…」
「えっ…?」
「狂変病が流行ることで喜ぶ人達がいるって事さ…」
私はお父さんから、
狂変病とは本当は作られた病気で、それを治すことができるが、治すことができる人を消して回っている奴がいるってことを伝えられた。
「リツカは、正義感のある、度胸のある、強い子に育った…私は…娘だというのに申し訳ないが…こう思った」
【リツカなら世界を救える】
「わ、私が…世界を救う…?」
「自分の娘に世界を救えなんて…ひどい父親だよな…」
「やるよ!お父さん!やるから!私やるから!」
「そうか…頼もしいなリツカは…」
「リツカ…この世界の狂変病を浄化してくれ…!この世界の黒幕を…倒してくれ…!この世界を…救ってくれ…」
「うん!やるよ!」
どんどんお父さんの息が弱くなるのを感じる…
「リツカ…」
「なに…お父さん…?」
「誕生日…おめ…で…とう…」
お父さんの息が完全に止まった。私は頭が真っ白になった。
「ああああああっっっ!!!」
リツカの全身が光りだし、あたりにまだ残っていた魔物達が村人の姿に戻った。
そこへデルタに向かったはずのマルベールが騒動を耳にして、ササキサ村に戻ってきた。
「こ、これは…リツカ!!」
リツカを見つけ、すぐさま駆け寄る。
「あ、まるちゃん…お父さん…死んじゃった…」
マルベールは一目見て察し、立ち上がった
「ああ、そうだな。よく…頑張ったな」
「私、泣かないよ。世界を救う勇者は、泣かないんだって!」
うん。絶対目から滝が出てるけど。仕方ない。
マルベールはさっきの含んだ目を解かなかった。
「どうしたの…?」
マルベールは剣を抜き、構えた。
するとリツカの目の前に漆黒のローブの男が現れた。
「なっ!?」
やばい!コイツやばい!
私はすぐさまバックステップした。
「ほう」
「はぁっ!!」
まるちゃんがローブ男に斬りかかった
ローブ男は半身にして避け、魔術で私を狙った。
「くっ!」
まるちゃんが私を庇うように盾で魔術を受け止めた
この隙に私が行くしかない!飛び出して正拳突きを顔面にぶつけてやった。
「ぐはぁっ!!」
ローブ男は隠れていた顔面が露わになった。褐色の肌に、左眼が傷跡で塞がっていた。
「カタルシスの末裔よ…滅ぶべし…」
そう言って消えていった。
まるちゃんはようやく警戒を解いたようだ。
「なんだったの…」
まるちゃんは剣を鞘におさめながら
「それにカタルシスってなんだ…?」
途端にフラフラしてきた。あれ…これやばい…??
「おい!どうした!?リツカ!リツカ!!」
--翌日--
「う、うーん」
どうやら私はあの後倒れたようだ。
ここは…軍の滞在所…?
「お、起きたか!」
まるちゃんだ。ずっとそばに居てくれたみたい。
「ありがとう。まるちゃん」
「いいんだよ。それより…残念だったな」
まるちゃんは頭をかきながら言った
私はお父さんに言われたことをまるちゃんにも伝えた。
「そっ…か…そんな話だったのか…どうすっかな」
「村のみんなにも説明してくる!」
「待て待て!!」
まるちゃんが起き上がる私の肩を抑えた
「なんで?」
「村の奴らには…もう関わるな…」
「???」
「"最厄の子"って知ってるか?」
「全然しらない」
まるちゃん曰く、最厄の子というのは、
{全身を光らせることで狂変病を治すことができる反面、狂変病を辺りに広める原因}と言われている。
「ちょっ!なんで私が!」
思わず起き上がってしまった
「実際リツカの成人式の場で狂変病が多数発生、そしてリツカは全身が光った…間違い無いだろうな」
「いや!そうだけど!お父さんは!」
私は動揺を隠せず声を荒げる
「わかってるよ。でも村のみんなは違う。一気にリツカの、いやお前ら家族が最厄だって事になってる。だからお前は、自分の能力を他人にはなるべく見せないように、最厄の子だとバレないようにしないとだな」
私はまたベッドに座った。
「だから俺が、滞在所にかくまっているんだ。」
どうりで、目覚めたのが教会裏の自宅じゃないわけだ…
「私たちの家は…?」
まるちゃんは困った顔をした
「そっか…」
「リツカ…本当に浄化の旅をするのか?そしてバックにいる黒幕ともやり合うのか?」
私は即答した
「うん、やるよ。お父さんと約束したから」
「くっそ心配でしかないけど、尊重するよ。俺は」
まるちゃんは何かを決めたようだ
「リツカ!貴様を最厄の子として、デルタまで連行する!!」
まるちゃんが突然そんな事を言い出したので、驚いてまたベッドから起き上がってしまった。
「えっ!まるちゃん!?」
「っていう形で、俺と都市デルタまで行かないか?」
「ちょ!びっくりしたぁ…」
「悪い悪い!リツカの必要そうな私物も、燃やされる前にちゃんと回収しといたからさ!」
そう言ってまるちゃんが私の物をいっぱい詰めてあるバッグを取り出した。下着までちゃんと回収してた
「やっぱみんなに燃やされたんだ」
「あ、悪い…そうなんだ」
「もういい…村のみんなとは家族みたいな関係だと思ってたんだけどなあ」
私は、まるちゃんに手錠をされ、ロープに繋がれて、滞在所から出た。
村人達が私を見た瞬間に血相を変えた。
「さ、最厄の子が!さっさと消えやがれ!」
「うちの主人を返して!!!」
「お母さんを返して!!」
私は飛び交う非難の声に顔を背けることしかできなかった。10年もここに居たのに、私もお父さんを亡くしたのに…
「ササキサ村のみなさん!最厄の子は、この私、マルベールが都市デルタにて!責任を持って処分しますので!どうかご安心ください!」
まるちゃんはそういって無理矢理私を村の外に連れ出した。そして村から充分離れたところで、手錠とロープを外してくれた。
「まるちゃん…私…」
やばい、今にも泣きそうだ
「さっきは悪かったな。ああ言うしかなかった。でもな、この程度で落ち込んでちゃ先が思いやられるな。」
「だ、だって…」
気付いたら強烈な男女平等ビンタを食らってた。
クソ痛いよ、まるちゃん。
「過酷な運命だって言われたんだろ!そしてお前はそれでもやるって言ったんだ!!最厄の子と呼ばれながら、全世界を敵にしながら、世界を浄化していくと決めたんだろうが!」
「うん…」
「お前が決めたのは、そういう茨の道だ…」
「そうだよね…ありがとう。まるちゃん!よっし!そうと決まったらデルタで色々と調べるぞー!」
「そうこなくちゃな!勇者リツカ!これもやるよ」
まるちゃんは片手剣と盾を渡してくれた。
「本物の…剣…」
「昨日のローブの男は明らかにリツカの命を狙ってる感じだったから、ほぼ間違いなく黒幕の一味だろうな。そういうやつらと戦う時に木刀じゃ勝てねえからな。」
「命を…奪うってことだよね…」
「そ、やられる前にやるしかない」
まるちゃんは右手を出した
「じゃ、デルタまで結構長いからよろしくな。勇者リツカさん!』
私はしっかりと握手した後にまるちゃんにビンタした
「ぶふぉあっ!!」
まるちゃんは倒れ込む
「よろしくね!まるちゃん!」
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