男の中心でアイを叫ぶ事件②
車窓から流れている風景は、いつも買い物などを付き合う時とは違う。
見たことの無い街並み。
今にも雨が振り出しそうな、怪しい雲行きだったことをよく覚えている。
登校をサボってまでの病院。
運転席で終始無言の親父。
その時、父が何を考えてたかまでは知らない。
ただ、オレはといえば「まぁ、診てもらうだけ診てもらうか。」ぐらいの軽い気持ちだった。
着いた先のビル三階程に、その病院はあった。
小さい病院だったので、多分泌尿器科限定だったのだろうと思う。
医者は、『こうしたら痛い?ならこれは?』と、
しばらくオレの一物を触診しながら、反応を伺った後、
『間違いありませんね。』
と、親父の方を向きながら、確信したように頷いた。
『やっぱり、そうですか・・・。』
父は飄々とした様子で答えながら、空いている丸椅子に座った。
『まだ小さいうちでよかったですね。』
『そうなんですかね?』
『成長してしまってからではトラウマになりやすいですから。』
『しかし、まさか自分の息子がこうなるとは・・・・・』
なんなんだ、この重い会話。
段々と自分の置かれている立場が、あまりよろしくない事を自覚していく。
『なんか、僕ヤバいん?』
不安を抑えきれず、思わず聞いたら、医者はニッコリと微笑んだ。
『大丈夫やで。今からちょっと手術したら治るから。』
『うん・・・。』
・・・・・・・。
『え?』
今から!?
そんな即行するの!!!?
『どれぐらい切りますか?』
親父は息子の息子、いや息子の一物を指さしながら、医者を見た。
え?切るの?
ねぇ、そこ切るの?
『これからの成長を考えて、こっからここまでぐらいの皮を切ります。』
赤いペンで躊躇なく一物に線を書く医者。
なんかゴッソリと取ろうとしてることだけはわかった。
待ってくれ!!待ってくれ!!
そんなとこ切ったら死んじゃうよ!!
今日は触診で終わると舐めきっていた男は超焦った。
焦りまくった。
目が泳ぎまくった。
『いいいいやいやいやでも、お父さん。
僕明日も学校あるしjsふぃssdjふぃsdjふぃお』
『ヨウスケ・・・。』
肩に置かれる手。
親父の大きな手。
『・・・こういうのは早い方がいいんや、ヨウスケ。』
そう言って、ポンポンと肩を叩く。
とても、おだやかな笑顔。
本当に父はとてもおだやかな笑顔をした。
『・・・ほんまに?』
思わず、医者を見る。
『ヨウスケ君、ほんまやで。
お父さんの言う通りや・・・・・・。』
彼もとても穏やかな笑顔だった。
すべてを諦めて、ガックリと頭を垂れた。
『大丈夫。痛くならないように麻酔してあげるから。』
そう言って、出された注射は考えられないぐらい針が太かった。
待て!!!
正気の沙汰!!!?
マジでそれココ刺すの!!?
そんなブットいの入るわけ無いよ!!!
ギラリと針の先端が光る。
地獄か、天国か、よくわからないものが手招きしていた。