硫黄島
硫黄島
宗助が硫黄島につく1時間前、時刻はすでに26時自衛隊にもたらされた外交筋からの情報は全隊員に緊張をもたらせた。
もちろんUSAからの映像はすでに民間でも放送されており、すべての隊員が知っていることだが約半数の自衛隊員がその時点では他国の惨劇と言う位置づけであり自国の中で同じような惨劇が起こるとは思ってもみなかった。
USAからの情報により、インベーダーの進む方向を割り出しおおよその潜伏地を計算する。
当然のことながら硫黄島から哨戒機とヘリそれに戦闘機が飛び立ち南硫黄島そして北硫黄島を探索する。
「アメリカさんの情報だと南硫黄島だよな」パイロット
「ああ一度上陸して調べないといけないかもしれないな」副パイロット
日本には攻撃ヘリというものは少ない、ヘリは輸送の手段として使われることが多くほとんどの場合僻地には少数しか配備されていない、夜間の偵察は基本的に船の捜索が多くこの日も夜間の捜索に期待はしていなかった。それに硫黄島は航空自衛隊の基地であり陸自の隊員がいないため現地での足を使った捜索には不向きだった。
「インベーダーか、やつら空を飛べるんだってな」
「何でも超能力が使えるらしいぞ」
「どこのアニメだよ」
「俺もそう思うが、上からの話だとこないだのUFOの攻撃もそいつららしいぞ」
「まじかよ」
「そろそろだ」
『現着南硫黄島周辺にて捜索開始』
そこには疲れて眠っている宇宙人が2名、生い茂った樹木に隠れ潜んでいた。
南硫黄島は無人島のため現在は人が住んでいない、樹木は結構生い茂っており2人を隠すことぐらいはできそうだが。
宇宙人はそれでも見つかるのではと考えていた、それにヘリコプターの立てる音にもイラついていた。
《また来たね》
《でも前の奴らとは違うね》
《こちらを見つけたわけではなさそうだ》
《うるさくて寝れやしない》
《どうする?》
《好きにすれば》
《じゃあ落としちゃおう》
そういうと超能力を使用して偵察ヘリの後部ローターを破壊する。
バキンッ!
「なんだ!」
「わからない急に舵が利かなくなった」
「メーデーメーデー」
「うわーだめだ」
「不時着するぞ!」
海上自衛隊の哨戒ヘリは後部ローターを破壊されたため水平航行ができず斜めになったまま南硫黄島の山の斜面へとどんどん高度を落としていった。
ドウン!ガラガラガラ ボンッ!
「うっ」
この時点ではまだ乗り組員2名には息があった。
宗助たちは間に合うのだろうか…
【このあたりかな?】
【宗助様煙が見えます】
【マジ】
【敵にやられたのかはわかりませんが不時着したようです】
わずかに煙のようなものが見えたが、現在時間は27時まだ辺りは暗く星がキラキラと瞬いている。
南硫黄島は東京より少し早く夜が明けるがその差はほとんどない。
【よし急ぐぞ!】
【かしこまりました】
数分で事故現場に到着、そこには不時着したヘリコプターと若い男女の姿が。
「お前らは誰だ!」
《なんだ?どこからか声がする、こいつらだけじゃないのか?》
《違うこの声は敵よ》
【宗助様インベーダーです】
【リリーこいつらを排除】
【了解しました】
【レベル解除】
とっさにリリーの攻撃レベルを10へ引き上げた。
光学迷彩を纏ったまま敵へと迫るリリー、さすがに姿が見えない敵に対してはいくら超能力が有ろうとも対応するのは難しかった。
《なんだこいつ?》
《敵のロボット?》
ガイン!バキン!
《ぐっ!見えない》
《強い、いったん離れるわよ》
《わ わかった》
その隙に俺は乗組員を助けることにした、うまく行けばまだ間に合う。
その判断は正解だった運がよかったのだろう、墜落すると大抵は燃料に火が付き全体が燃えてしまう所が、落下スピードが遅かったのか燃料タンクの損傷が少なかったのか、折れた後部ローターのみわずかにくすぶっている様子。
コクピットにはうめき声を上げる人影が見えていた、俺は前面のキャノピーを破り捨て中の隊員を助けるべく安全ベルトを引きちぎる。
「大丈夫か?」
「う…」
(まずい)
【2名共に内臓破裂しています、すぐにロボ化した方が良いと思われます】
【わかった、2名にロボ化を適用】
【ロボ化発動3・2・1ロボ化完了】
俺は2名を下草の茂げる平らな場所に寝かせると、今度はロボ化を解除した。
「大丈夫ですか?」
「う 声だけ?…誰だ?」
「すみませんそれは明かせませんが、インベーダーと敵対する者です」
「そうか、そういう組織があったのか」
自衛隊員は勘違いしているようだが、まあそういう団体があったとしておかしくはないだろう。
俺もそう思いたいし、まあそれが俺だとは言いたくはないが。
光学迷彩を解いて彼らに姿を見せるとそれは又問題になってしまう、呂方宗助と今ここで彼らを助けた人物は別々だと思い込ませておいた方がよさそうだ。
「いまは事情で明かせませんが、少し休んでいてください助けを呼んできます」
「そうか頼む」
ロボ化しても母の時と同じようにかなりの血液が失われている、ロボ化で生命は助かったとしても血液の減少だけは補えないみたいだ。
その結果彼らの怪我は完治しても、貧血状態からは免れない。
2名の内1名は貧血のため意識を失っている。
【リリーそっちはどうだ】
【一応一人は確保しました】
【やるな・さすが、ですがもう一人は逃げてしまいました】
【わかった俺もそっちへ行く】
【お待ちしています】
光学迷彩を起動したままの戦闘、ここからも音でしか戦いを感知できない。
上空へと少し飛ぶとリリーとみられる遠赤外線の影と彼女に捕まえられている宇宙人の姿が見えた。
【すごいな、死んでいるのか?】
【いいえ気を失ったようです】
【空では落ち着かない島に降りよう】
俺たちは先ほどのヘリ墜落現場からは反対側の浜辺へ着陸、リリーが捕まえている宇宙人を観察することにした。
【一応宇宙人にも光学迷彩を施してあります】
【もう一人の奴に見つからないようにか、さすがだな】
そして宇宙人をさわってみる。
【こいつ女か?】
【性別は女性ですね、年齢は25歳前後です、遺伝子組み換えで年齢を若く設定しているようですね、外見は16歳前後にしか見えないようです】
【リリーどうしたらいいと思う?】
【一番は生命活動を終わらせることですが、宗助様は生かす方向をお考えですね】
【ああ、確かにUSAでは死人まで出ているが、こいつを殺すとまずいような気がするんだ】
【勘というスキルですね】
【スキルかどうかは分かんないけど、こいつを使って向こうの国を変えることができそうな気がするんだ、敵を仲間にできるかはわからないけどね】
【では洗脳を試みますか】
【洗脳?】
【この個体は25年マザーという半機械のAIから教育を受けていますがそれは生命の尊厳を全く教育されていない状態です、今の宗助様ならそういう知識をこの個体に教え込むことで考えを変えることが可能ではと考察いたします】
【と言われてもどうするんだ?】
【まずは彼女の脳のみロボ化してしまいましょう、その後この世界の生命に関する情報を脳のストレージにペーストします】
【本当にそれでうまく行くか?】
【それは分かりませんが、このままUSAへ引き渡しても彼女は実験台になりどこかへ隠蔽されるでしょう】
【確かに、一か八か試してみる価値はありそうだな】
【それに宗助様の下僕にすることも可能です】
【なにそれ?初めて聞いたんだけど】
【脳をコンピューター化すると言う事は、その設定も変更可能になると言う事です】
【確かに…】
【と言う事はストレージにペーストして、まずかったら下僕化すればいいと言う事か】
【その通りです】
【よしやろう!】
女の子の外見をした宇宙人、その姿は金髪のティーンエイジャーにしか見えない。
着ている服は少し子供っぽい気もするが、胸もふっくら膨らんでいるしウエストも細く。
アングロサクソン系外人の12~14歳ぐらいという感じ。




