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閑話(惑星RIZ175)

閑話(惑星RIZ175)


その星はすでに死ぬ寸前と言って良い、だがその判断は人類から見た場合だ。

この惑星に移り住んでからすでに500年が過ぎようとしている、この星に住む人類は500年前この星にやってきたがその時は水も生き物も豊富な星だった。

平均気温は30度星の大きさは地球と比べると約2倍という大きさ、移住してきた人類の数は20億を超えていた。

人類は数千年前に2つの方向へ分かたれた、進化していくものと自然に任すもの。

進化する者達のグループはある時から急激に変化する。それはある能力を手に入れたから。

超能力それは人類が手に入れてよいものではなかったが。

進化の過程で超能力を得た者たちと得られない者達で争いが起き。

力を手に入れた者たちは新たな住処を求めて放浪の旅に出た、そして超能力と科学力を使い、いくつもの星を手に入れ、さらなる進化を求めて行った。

効率よく超能力者を増やす方法や住環境を自分たちの思い通りにするにはどうすれば良いかと考えた。

その結果、効率よく物事を決めるには自らの生活を決める判断を機械に任せた方が良いと結論付けた。

だが電子頭脳だけでは思考能力に生き物としての必要な知識が欠けており、そのままでは人間の管理が難しいと分った。

そこで電子頭脳の根幹には生体頭脳の記憶を応用することにした。


その試みはうまく行き電子頭脳にマザーと名前を付けて自分たちの生活全般を任せるようになった。

現在彼らの増殖方法はすべて機械による、通常の生殖行動は行わず男女共にある年になると。

体内から卵子と精子をすべて抜き取り冷凍保存法による保管を行う、その後は定期的に生体生産工場にて人間を生産していく、機械の中で育つ生命体。

受精後数日してからある薬品を栄養として与えると遺伝子に変化が起こり超能力を得ることができる。

彼らはそうして今まで生きてきた。


科学は発展し超能力を使用できるため、移動方法はほとんどが空を利用するがこの時代は惑星の表面には毒性の強い気体が多いため現在は地下に都市を作り生活している。

そして汚染された星でも効率よく開拓できるように意思の伝達方法としてテレパシーを利用する、そのため次第に声帯は退化して行き徐々に言葉は失われつつある。

但し彼らの言葉は地球の言語と似ているところが多く理解するのはさほど難しくない。

テレパシーというのは言葉だけではなく映像も含まれるため、何を考えるかで相手に文字以外で伝えることもできるからだ。

そしてテレパシーは相手に自分の記憶をそのまま移植することも可能だ。

その利便性は考えてみればすぐにわかる、一人が経験したことが一日と経たぬうちに数億人の経験になるのだから。

だがそれも欠点がないとは言えない、もし全く理解できない倫理観を強く植え付けた場合どうなるのか?うまくいけば洗脳、失敗すると廃人と化す。


機械に育てられ親という概念がマザーのみという形、そして子を作ることもなく一生を終えるのだが。

彼らとて全て思い通りに事が運ぶわけではない。

分かたれた人類、それは完璧な差別ではなく一部の突発的な異常とも言える。

初期に生まれた子供は通常の生殖行為だった、その後は確かに超能力を持つ子は多く生まれたが、そうでない子供も生まれてきた。

そして機械に任せても数パーセントは能力を持たない子供は発生する、それに意図しない進化を遂げた子供も同時に発生するのだ。

それら管理された中から発生する異常な分子は当然のことだが、粛清される運命となる。

異端児としてレッテルを張られた者は粛清されるが、その数は年々増えている。


どんなシステムにも完全完璧はあり得ない、それが生き物というものだ。

そして新たな星を見つけては最初に機械の兵士を送り込み、まずはすべてを更地に変えていく。

彼らの攻撃ロボットに対する命令は、競合しうる他の人類と人造の構造物の破壊そして自分たちの脅威となりえる生物の排除。

基本的にはエネルギー資源を温存するため火器はほとんど使用しない、地上へ攻撃するために使用する機械は物理的な攻撃による破壊が主流だ。

火器を使うと言う事は貴重なエネルギーを拡散し、失ってしまうことにつながると彼らは考えている。


彼らの姿はほぼ地球の人類と同じだ、ただし体毛は退化していて常に体全体をスーツで被っている。

たまに先祖返りで体毛が多い生体も生まれてくるが、その場合は薬品で処理するかもしくは低威力レーザーを使用して脱毛する。

平均身長は165センチ、全体に色白で男女ともに幼児体系と言って良い。

遺伝子を改造しているため年をとっても外見は20歳代としか見えない。

目はやや黄色い瞳で、指には爪が無く筋肉は少なめだ。

平均死亡年齢は230歳、生体としての最高年齢は300歳だがテレパシーを使用した記憶移動が可能なため、体の年齢が終わりに近づくと赤ん坊の頭脳に自らの意識を移すこともできる。

記憶の移譲は全ての人体で行われるわけではない、普段はごく身近な者達でのみ極少量の知識を共有するために行われるのだが、死が近い者達で地位の高い者のみこうやって生まれてくる生体に知識を植え付ける、記憶を移譲できるのは限られたカースト上位にいるものだけだ。


現在の最高知識所有者は2千歳を超えるという、不死や永遠を機械と共に求めた結果だ。

ある意味転生と言えなくもない。

惑星リズの地下都市は星全体に広がっている、ごみや毒になりえる廃棄物質は常に地上へと廃棄されるため地下はきれいに見えるが地上はゴミだらけ。

再利用率は80%近くではあるが、その過程で作られる放射性の高い有毒物質はゼロとは言えない。

AIリリーによって取得した映像に映っていたのはほとんどが廃棄された地上の映像。

その為惑星リズに住む人類の姿は地上では見つからない。


地下の暮らしは快適だった、移動はすべて超能力による飛行移動か機械による瞬間移動。

ほとんどの場合椅子に座っているか寝たままで生活している、地球の人類が普通の生活と呼んでいる通勤や通学、運動や趣味と言った余暇を楽しむ生活はほとんどない。

惑星リズでの生活は一般市民と戦闘市民に区分けされている。

一般市民はさらに予備市民と生活運営市民に区分けされ、予備市民はコールドスリープされて過ごし、生活運営市民は生きていくために必要な各種業務を行う。

ほとんどが機械の管理や修理のような雑務となる。

戦闘市民は5つに格付けされ、他の星への略奪戦争へと借り出される、その際有益なポイントを揚げることでカーストが上がっていく。

最高位はマザー付き指令官、ここまで上り詰めればマザーと言われるAIの意思変更や決定事項に直接関与することができる。

次が各惑星管轄司令官、次が部隊指令官、そして隊長、最後が一般兵。


テレパシーにより記憶が共有されるため、差別や命令違反などはほとんどない。

もちろん男女の差別もなく、ある意味理想な生態系と言えるのだが。よく考えてみればこれは昆虫(蟻や蜂)の生態系とほぼ同じ。

では彼らの中で異端と呼ばれた粛清される者たちの末路がどうなるのかも記載しておこう。

異端者は2つに分けられる一つは無能力者達。

超能力が無いものは成長過程でほぼ100%粛清される、力がある者に逆らうことなど無能力者には出来ないと言える。

ではもう一つの異端者と呼ばれる超越者はどうなるのか、ほとんどの場合超越者は逃げ延びる。

最初は能力を隠し他の仲間に紛れて暮らすため、異端として見つけることが困難だ。

そしてある時同じような超越者を見つけ行動を起こす。

一つはすぐに自分たちがいるコロニーから出て地上で暮らそうとするもの、そこは先に書いたように過酷な人生が待っている。

母星で逃げ延びた超越者たちは、まだ開発されていない地下に隠れ住むのが通例だ。

地球の2倍ある星の地下にはまだ開拓可能な土地は残されている、それに超能力を2つ以上有する超越者には粛清部隊を躱すこともさほど難しくはない、だがこの場合生命活動を行うためのエネルギーを得るのは難しいため、超越者コロニーに逃げ込むのが一番だろう。

過去に超越者として力を発現した者たちは、すでに数千人に及ぶ彼らは元居た都市から離れ超越者たちだけで暮らしている、そこに逃げ込めば新たに生まれた超越者も母星で生き残ることは可能だが、そこにはさらに過酷な運命が待っている。

もう一つが戦闘市民に紛れ外宇宙の略奪戦争に参加しそのままその星に定住することだ。

それならば母星からの粛清命令を躱すことが可能となる、もちろんそうして逃げ延びた異端者はかなり多い。


過去、地球に訪れた宇宙人のほとんどがこの異端の超越者に属する。

そうなのだ、すでに地球には過去に他の星から里帰りした宇宙人がいたりする、彼らはすでに地球人と同化しているため探しても見つからないが。

なにせ人類の発祥の地はここ地球なのだから。

長い年月の末に他の星へ移住し、宇宙人となった人類。

彼らは忘れてしまったのかもしれない、地球が故郷だと言う事を。

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