ペジュン工業大学
ペジュン工業大学
ここはこの国の工業系大学最高峰であり理数系学科のトップである。
この大学に入学ができれば死ぬまで暮らしは保証されているという噂まである。
その最高学府を首席で卒業したというリーさんは次の朝8時に俺達が宿泊しているホテルへとやってきた。
「おはようございます皆さん」
「おはようございます」
「おはようっす」
「おはよう~」
「…」
「タタタ」
「もう来たのか早いな」教授
ホテルのエレベーターを出て急ぎ足でフロントへとやってきた高坂准教授、あわてて用意したのか、まだスラックスのベルトが閉まっていなかった。
彼は後数年で定年ではあるが、その前に論文を発表し正教授の座を手に入れる予定なのだそう。
「ダダダ」
「もう来てるじゃんか」神田
今度はホテルの階段を駆け下りて来る数人の学生、どうやら寝坊したのかそれとも時間を間違えたのか。
「あ!」
「ズデン」
階段を一段踏み外し一人ずっこけて周りを見る。
「いてて」曾我部
「大丈夫か?」伏見
「それじゃ皆来たところで、行きますね」リー
(え それだけ?痛かった?とかは)
「完全に滑ったな」
「ああ」
既にホテルの前には小型のバスが停車しており俺達が乗り込むのを待っている。
その後ろにもタクシーらしき車が並んでいるが、それらも全て自動運行らしい。
「乗って下さい」
なんだか昨日とは雰囲気が違うリーさん、何か問題でもあったのだろうか?
《発車いたします》
自動音声で発車を告げるとスムーズに小型の自動バスは本道へと合流していく。
このホテルから行先の大学へは20分ほどの距離だと聞いているが、町は昨日の事件の事などまるでなかったかのようだ。
「ソウスケ眠れましたか?」リー
「はい何とか」
「俺はよく眠れたぞ」神田
「おれも」曾我部
「お前の事なんか聞いてないって」間田
勝手に話し出す学生達、リーさんの目を自分に向けようと必死だが。
まるで気にせず宗助に向かって話し出す。
「今日会う人は私の師である江明訪教授です」
「コウミンホ教授は中国工業開拓の祖と言われている」高坂教授
「それはこちらのニュースで聞きました」
「私より5歳ほど若いが、論文の数が私の3倍だからな」
「リーさんも共同研究者になっていましたよね」
「在学中に少しお供しました、そのおかげで主席を取れたのです」
「そうなんですか、会うのが楽しみです」
リーさんはにこりと微笑んで席を立つと、自動操縦の端末へと行き行先をチェックする。
全部自動と言ってもそれは車の中に組み込まれた情報によって動くだけで、道路の状況は日々変化していく。
ここ中国ではいつなんどき道路が封鎖され通行止めになっていたりするかわからないからだ。
道路状況のデータがすぐに反映されるかどうか、目の前の道路状況に変更があるかをリーさんは目視でチェックしているようだ。




