久々の飛行機
久々の飛行機
数日が経ち大学の交換授業を受けるべく本日は東京から少し離れた国際空港へと足を運んだ。
1週間程度の旅行となる予定だが、この旅行を全日程クリアできればなんと准教授の計らいで後期の単位がもらえてしまうという。
だがそこには旅費と航空機代と言うソコソコの金額を自腹で出さなければならない、宗助以外の学生には頭が痛い状況だった。
宗助はもちろん現在は大金持ちなので簡単にそこはクリアできるのだが、普通の学生達はそうでもなかった。
「ここまでの電車賃だろ、航空機の往復料金だろ、そしてホテル代だろ、詰んだ…」加藤理人
「その代わり後期の授業受けなくていいんだぜ、その空いた時間にバイトできるだろう」神田
「そうは言ってもだな~」
「みんな揃ったな」高坂 准教授
1週間の交換留学に参加できるのは10人に満たない、航空機代が10万近くそしてホテル代が1週間で10万円近い。
総額で30万円弱の旅費は学生にとって結構痛い出費だ、本来は卒業旅行の時に使用するはずの旅行代金に匹敵する。
もちろん1年生でこの金額をポンと出せる家はそれほどない、他の教授の講義が重なり単位を外せない為、今回は参加できないなんていう学生もかなりいる。
だがそんな学生たちをしり目に、うれしそうな顔をしてチェックカウンターから歩いてくるリーさん。
「お待たせしました10時の便ですねあと10分ほどです」リー
「搭乗は9時50分からか」
「うふふ、ようやく宗助を紹介できます」リーシャオン
「何のこと?」
「行ってからのお楽しみです」
「おい呂方、いつからリーさんと親しくなったんだよ」
「あー彼女は俺の父が務めている研究所にしばらくいたんだよ」
「そうなの!」
「蓄電池とか発電機とかか?」
「そうそう」
「へー」
「リーさん俺もよろしく」神田
下心見え見えの神田だが、リーさんの眼中には宗助以外の男子はいない。
「はいでも私はソウスケ大好きですから邪魔するのはダメですね」
「は?」
(なんだよ おまえ、もう手を付けたのかよ)
(しらないよ、普通の友達だって)
「そこ無駄話などしてないで話を聞くように、向こうに着いたらすぐにホテルに荷物を置いて大学へ行くからな」
「移動は?」
「向こうの交通機関は全部無人バスだ」
「予約すれば自動運転の小型バスが迎えに来る、ベジュン大学へはそのバスに乗っていく」
「その後は私が案内しますね、工学科の教授は私の師でもあります」リー
「ナリタ発ペジュン行きJAV11987便、搭乗を開始いたします」
「荷物忘れるな」
ちなみに今回リリーズは光学迷彩を使用して宗助のデイバックに掴まっている。
そうしないと持ち込むときに調べられたりするのが厄介だからだ。
もちろん荷物チェックの時には光学迷彩を使って壁際を移動してもらう形になる。
今回連れて行くのはパッションリリー、新たに手に入れた30センチバージョン。
既に同じものを2体入手している、50センチバージョンはこの冬発売予定との事ですでに予約済みだったりする。
【税関の入り方は既に先輩からレクチャー済みです】パッション
【よろしく頼むよ】
【お任せ下さい!】
「座席に座りましたらシートベルトを着用ください」CA
「おいなんでお前が一番左なんだよ」
「知らないよ」
この席順は全部リーさんが手配したらしい、そして当然のように俺の隣に座るリーさん。
そして通路側には教授が座っているのだが、教授はどうやらすぐに寝る予定らしい。
「トランク使いますか?」リー
「あ そうだね、じゃあデイバックだけ」
俺の顔に胸を押し付けるような格好で頭上のトランクを開け、自分の荷物と一緒に俺のデイバックを押し込む。
「しつれいしますね」
「むにゅ」
動くたびに香水の香りがするが、この香りは日本ではあまり嗅いだことが無い。
【香木の一種です】リリー
【ふーん】
【いくつかの香木をブレンドして生成された香水の様です】
【高そうだな】
【日本では数百万円するものもあります】
【そんなにするのか?】
【NETではそう記されています】
「ソウスケ何か私の顔に付いていますか?」
「あ いやいい香りだなと思って」
「この香水は我が家に伝わる特殊な製法で作られています、欲しいですか?」
「いや」
「日本では魅惑の香りと言われています」
【香季麗仁有限公司のブランドです、リーさんの兄が運営しています】
【そうなんだ】
【兄は李丈文、父は李宗完共産党の幹部の一人となっています2051年調べ】
【こないだお灸を添えたファンよりも立場は?】
【一つ上になります】
【へーという事はリーさんを邪険にするとまずいって感じかな】
【すでに鹵獲は済んでいますので問題は無いと思われます】
【確かにそうだな】
【はい、ですがそろそろもう一度ROBO化して確認しておくことをお勧めします】
【なんで?】
【新たな超能力が発症している可能性がございます】
【マジ】
確かリーさんが前回宗助に迫ってきた時には2つの超能力が生まれたばかりだった。
それは情報収集と幸福付与と言う。
人を幸せにしておいてそのすきに情報を盗む、スパイ活動をするには最も適していると言って良い。
だが宗助はこの時、父の研究を盗まれないよう2つのスキルにカギをかけておいたのだ。
「教授は寝てしまいましたね」
「ニコッ」
そういうと左手を俺の膝の上に延ばしてきた。
その隙を狙ってリーさんに2回目のROBO化を施してみる、今回は少し中身を探るだけだが宗助にとってまずいことがあるならば彼女のデータを見るだけでは済まないかも知れない。
【スキルROBO】
そしてリーさんのデータを調べてみたところ、新たな能力が生まれていたことを知る。
まさか2つのスキルを封印したことで、また新たな能力が生まれているとは思っても見なかった。
【これは】
【美麗と健康】
【外見を美しくそして綺麗に保つ超能力ではと思われます】
(美麗ってそのまんまじゃん)
【幸福付与が止められたから内側に影響してきたのか?】
【その可能性はあります】
【これってまずいのか?】
【封印したことで生まれた能力は封印が解けると無くなる可能性が有ります】
【そうなんだ】
【カギを掛けた幸福付与のレベルが上がってないか】
鍵を掛けたとしてもその超能力が全く関係が無くなるわけではないらしい。
一度取得した超能力、使用を停止されても普段の生活でわずかながらだが能力が成長するのだという。
【カギを賭けても能力は捨てられない限り経験が積み重なります】
【どこかのゲームの設定みたいだな】
【宗助様の能力も同じです】
【そういえば最近はそれほど腹も減らなくなったような】
【超能力は使用することで成長します、新たなスキルも生まれたりします】
【そうなんだ】
宗助は自分のデータのほとんどはあまり調べていなかったりする。
スキルROBOによって誕生したAIと言う、もう一人の人格に任せておけば間違いが無い。
何かあればすぐに教えてくれるし、聞けばなんでも答えてくれる便利な相棒。
【正しい方向性で発生したならば新たに得た能力はそのままでよろしいかと】
【わかった新しい能力はこのまま様子を見るということで】
【宗助様への愛情係数はいかがいたしますか?90%を超えています】
【そうなの?それは下げておいた方が良いのか?】
【下げた場合、新たな能力に対しマイナスに働く可能性がございますが】
【そうなんだ】
【宗助様が善だという設定で愛情に手を加えている場合、親密度や愛情は増えるのが当たり前です、逆にそれを減らすと悪い感情が生まれマイナスの力が働きます】
【確かに】
【すでにリー様の行動理念に宗助様の邪魔はしないという設定が付与されていますので、これ以上変更すると別の問題が発生すると思われます】
【別の?】
【アクシデントが起きた時にリー様はわざと回避しなくなるとか、危険が迫った時に思考停止するとかです】
【それじゃまるでデバフみたいだな】
【それが超能力の相対性理論なのではないかと思われます】
【ふーん】
人を操るのは今の宗助にとってたやすいことだ、ROBO化して行動原理設定を書き換えてしまえばよい。
ROBO化により他人の頭の中をPCのように使用できるのだ、その人の行動すべてを操れると言っても過言ではない。
だがそれは操る相手がどうなっても良い場合であり、結果を考えるのであれば行動制限や行動変更には限界があると言う事になる。
別に宗助は自分以外がどうなっても良いなどと考えたことなど一度としてない。
出来れば少し先の未来の結果から逃げたいと思うだけ、特に女性達が宗助に向ける愛情が増すとどうしても逃げたくなってくる。
だからと言って奴隷のように100%従順に彼女らを操ろう、などとは思ってもいないのだから。




