交渉決裂
交渉決裂
まさか国際会議の会場が襲われてケガ人が出るとは思っても見なかったが。
そこにいるのが救世主もとい宗助なのだから、運が良いのか悪いのか。
彼が行く先々ではなぜかそういう事件が起こりやすかったりするが、今の所それは海外での話であり。
日本にいればそれほど事件は起こっていない、今の所。
「降参しろ」カミュ
「うるさい」
「なんでSPが残ってるんだ」
「王族がばらしたのかも…」
「パパパパパン」
このままだと人質にとることも出来ずに終わる、そうなれば雇われテロリストの手元に入る大金は夢と消えるだろう。
「ダメだ、このままではらちが明かない」
「王族はなんて?」
「人質に取られているのは第十二王女らしい」
「それを盾に準備室に釘付けか」
「逃げれば人質の命は無いという事らしい」
「だからと言ってこのまま奴らに引き合わせれば、交渉を飲むことになる」
「卑怯なやつらだ」
たいていの場合テロリストの要求はお金であり、この場合はとてつもない金額を要求してくるだろう。
本日の計画を誰かに知らせれば人質を殺す、と言うのは脅しだが今回うまくいかなくても人質を盾に次の要求を突きつけて来る。
計画がうまくいけば王族の人質が増えてさらに金額を上げる事も可能になる、この計画を立案したやつは身代金をレイズすることにしたようだ。
だがどんな計画にも誤算と言うものがある、テロリストもこの場に救世主がいるとは思っても見なかった。
「静かになったな」
「どうした!」
「皆さんお静かに」宗助
「シュン」
「だれ!」
「あ、Mr呂方」
「なぜここに」
「あれテロリストは」
「そこで寝ていますよ」
「それよりも王族の人います?」
アラブの王族と言えば子だくさん、殆どの王族が3人以上の妻を娶る。
何ともうらやましい限りだが、そうすると子供は数十人いるという事になり外出時には全員SPが付くのが当たり前。
そのうちの一人が最近行方不明になり大騒ぎ、そして本日王族に電話が入った。
国際会議に出席し準備室で次の知らせを待てというメッセージ。
まさかここまで大がかりな計画だとは思わなかったが敵の計画もややずさんではある。
爆発が数分違うだけで人質候補以外の出席者はほぼ全員逃げてしまった後であり。
本来は爆発が起こった時にはすでに王族を拉致し、逃げる観客と一緒に脱出する計画だった。
要するに今回の要人拉致計画は爆発の時点でテロリストがすでに王族を拉致していなければならず。
完全に失敗していたことになるのだが、お金の為か拉致すると言う計画自体はそのまま敢行しようとしたらしい。
まあ宗助がいる時点で計画は完全に失敗に終わり既にテロリスト全員が夢の中。
10人中6人が拉致監禁組、4人が逃走する時の見張りと運転手。
見張りと運転手は拉致監禁組からの知らせを今も待っているようだ、2台の車で逃走するはずなのだが。
「詳しいこと聞けますか?」
「はい」ファイラビ第三皇子
1週間前にさらわれた王女は彼の妹に当る第十二皇女、12歳。
年の離れた妹ではあるがファイラビ皇子は既に既婚者であり自分の娘と妹が同じ年らしい。
今回の話はある組織が絡んだ王族同士の骨肉の争いと言って良い、以前からそういう脅しは何度かあったが、今までは全部一族の私兵たちで解決してきた。
だが今回は様子が違ってきた、そんな状況の中で対抗意識を燃やす一族にいくつかの国が関わりどんどん事は大きくなって行く。
そして今回USAと日本が開発を進めてきた大陸間転送装置が彼らの争いに拍車をかけた、彼らが運営している組織(会社)の利権争いへと発展してしまったという。
要求してきたのは金だけではない、大陸間転送装置そのものも含まれていた。
「それじゃここから出ると第十二皇女は殺されてしまうと」
「そうなんだ、我が一族が大陸間転送装置の導入と運用を任されてから対抗意識を燃やす奴らからの嫌がらせがひどくなって」
(ついには一族の一人がさらわれてしまったという事か)
「それどうにかできるとしたら、どうします」宗助
「は?」
「先ほどのテロリスト、リーダー格から手に入れた情報だと」
「情報だと?どうやって手に入れたのだ」SP
「それは秘密です」
「助け出せるなら何でもいう事を聞こう、お金ならいくらでも出す」
「お金はいりませんが今後の為に、無理な争いはしないように王様に進言していただけますか?」
「そんなことでよいのか?」
「皇子そんなこと勝手に約束してよろしいのですか」SP
「このぐらいの事なら私にも決定する権限がある、他の兄弟に聞くまでも無い」
「見つけ出せるのなら私の命にかけてそなたとの約束を果たそう」
(そこまでしてもらわなくても良いのだが)
「分かりました貴方の妹さんはそれほど遠くない場所に監禁されているようですから、ここでお待ちいただけますか?」
「待てばよいのだな」
「それではすぐに行ってきます」
「おいおいテロリストはこのままにして置いて大丈夫か?」カミュ
「3時間は大丈夫です、心配なら縛っておいてください、その間に片付けますね」
「は?」
「ではまた」
「タタタタ」
(あいつは ほんとにクレイジーだな)
第十二皇女が監禁されているのはUKではないが、それほど遠くない場所にいるようだ。
テロリストのリーダー格の記憶でわかったこと。
どこかの建物の中、そこには地下牢がありまるで城のような場所だった。
テロリストのリーダーが覚えていた映像とその位置が特定できれば、瞬間移動することなどたやすい。
宗助は準備室から立ち去ると人気のない場所まで行き、光学迷彩機能を起動させテロリストのアジトへと瞬間移動した。




