とんぼ返り
とんぼ返り
瞬間移動とは便利ではあるが、あまり使い過ぎると休む時間が無くなってしまうのではなかろうか?
地球は丸くそして時間は地区によって全く違う場合がある。
日本で問題の一つを解決しても1時間も経たずにUKに行き、また別の問題を解決しなければならない。
ロンドンのホテルには一応ロボスキルで監視カメラを設置してあり、部屋には誰も入っていないのが分かる。
妹の彼氏(暫定)の問題を解決し、家へ戻るとすぐさまUKへと瞬間移動する。
「そうすけ今度は何をします?」
「多分UKの超能力者数人に会って話すことになる」
「わかりました」
(本当はメアリーさんにも挨拶したかったが)
現在メアリーさんは北欧で国の任務に就いている、そのうちまた日本に来ると言っていたのでわざわざ会いに行く必要もないだろう。
それよりも数日後にCNへと交換留学へ行かなければならない、そちらの方が今は重要だと思える。
先ほど母には愛菜の事を報告しておいたが、まあ彼氏の映像を見て。
【かわいい!もしかしたら息子(義理)ちゃんになるかも知れないのね】
どうやら母の作家魂に火が付いた可能性が高い、別にそれをどうこう言うつもりは無いが。
彼を家に呼んだ時にどうなるのかが少し怖い、多分母に抱き着かれて顔を真っ赤に染める少年の姿が目に浮かんでくる。
だから何だと言われても返す言葉は無い、それを見て愛菜がどう思うのかも見てみたいのでこの件は自然に任そうと思う。
「そろそろ連絡が来そうだが、お腹は減ってない?」
「さっき食べましたからだいじょうぶです」
「分かった」
「プルルルル」
「はい」
「それじゃ行こう」
「はい」
次に行く場所はEU通商貿易会議場、そこには現在EU各国から貿易関係の要人が集まっている。
大陸間転移装置の運用に関しての法的な取り決めが各国間で行われるらしい。
基本的な問題は既に決められていると聞いている、後は先進国と発展途上国の間でどこまで差を埋めるかの話し合いがなされると聞いた。
途上国にとっては数百億円の資金など簡単に出せるわけがない、だが先進国が率先して融資の肩代わりをすることになっているらしい。
どの国がどの国へいくら融資するのか?EU各国での話し合いはなかなか長引いているようだ。
「おはよう、よく眠れたかね」
「ええ何とかね」
ホテルのロビーで出迎えたのは先日話したカミュサザラード、笑顔で出迎えてくれたがそこからの話はやはりラケイスとの一夜がどうだったのかと言う事。
(美女との一夜は格別なんじゃないのか?)
(僕はプラトニックが好きなので)
(うそだろ)
(本当ですよ)
「それではこちらへ、MrロホウMsラケイス」
(俺もこんどからそうするか…)
ホテルの前にはリムジンが止まっているが、そこには他にも同乗者がいるようだ。
「バタン」
「ナイスチューミーチュー」ミランダ
「久しぶり」
「会いたかったわ、そうすけ!」
「ガバッ」
「それでこちらは誰?」
「惑星YAKの神王ラケイスさん」
「ソウスケの婚約者ラケイスです、よろしくお願いします」
「こ 婚約!」
「どういうこと?」
「うーんどこから話そうか…」
全部話すにはまだ早い、だがラケイスを助けた時のことを嘘を混ぜて話すしかないだろう。
まさか惑星YAKまで行ったことまで話す必要はない、先日UKの首相たちに話したことと同じように。
月において救助した話の中にラケイスの国における要注意事項、女性の肌に触れる事に対しての知識を盛り込むだけだ。
「そんなの無理でしょ」
「そうなんだけどな」
「私の体は既にお手付き、と言う状態です」
「じゃあ私もでしょ!」
そういえばそんなことがあったような…
まあそれが婚約という事ならば一番最初に肌に触れた百合ちゃんが第一候補という事になるのだが、ここでそれを告げても何の意味も無い。
「まあまあ興奮しないで」カミュ
「この子があなたが言ってたやつ?」ソフィア・ニールセン
「こちらは?」
「私はソフィア、見ての通りオリンピックの強化選手よ、よろしくね」
「ぎゅ」
手を出した途端に握手してくるが、多分これは力試しのようだ。
外見はなかなかスタイルの良い女性だが、筋肉の付き具合はどう考えてもパワータイプの超能力者に間違いない。
握力は100kは超えていると思われる。
「クーあんた、何者!」
「あー普通の能力者かな?」
(インテリジェンスタイプじゃないのかよ)
「ミランダ彼女になんて話したんだ」
「イケメンで強くって優しいって」
「ありがとう、で強いというところに異を唱えたいわけね」
「握力は?」
「うーん1トンかな」
「嘘でしょ」
「ご想像にお任せします」
「こちらの女性は?」
「惑星YAKの神王ラケイスさんです」
「神王?惑星?」
(脳筋女子ってこんな感じなんだ、UKにもいたんだなるほど)
「この間送られてきた生体兵器ガイアギアの生まれた星から来たんだ」
「インベーダー!」
急に身構えるが、もちろん攻撃するなどと言うことは無い。
「いや彼女の国は違うよ」
「国 星じゃないの?」
「地球と同じ友好的な国もあれば好戦的な国もあるって事」
「そうなの?」
「はい私の国は戦いを望みませんが他の国は侵略行為を容認している国もあるのです」
「ふーん」
「ごめん話中悪いがもう一人乗せるから」カミュ
リムジンが音も無く停車するとドアが開き一人の男性が乗り込んだ。
その姿はどこかで見たことがある。
「初めまして森山省吾です」
「あ」
「君は呂方宗助君?」
「初めましてロホウソウスケです」
「こちらの美しい女性達は?」
「私はミランダコールマンです」
「私はソフィアニールセンよ」
「惑星YAKの神王ラケイスと申します」
「惑星YAK?」
「まさか宇宙人?」
「まだその話は聞いてませんか?」
「いや聞いていたが、そうか宗助君が関わっていたのか、そういう事か」
宇宙の事に関しては最近情報交換が盛んにおこなわれている。
但しあまりにも話が進み過ぎて多くの話は噂話ぐらいにしか広がっていないのが現状だ。
先日USAの記念式典に宗助とラケイスが参加したことも普通に宗助がアプリの開発者と言う肩書の紹介であり。
同行したラケイスは大統領の友人で宗助とも親しい人物とだけ語られている。
但しそれは表向きの話であり、情報通の間ではすでにラケイスが他の星からやってきた使節団の一人であるという情報が出回っていたりする。
要するに宇宙人だという噂が広がっているのは確かなのだが、噂と言う物をどこまで信じるのかは人それぞれだという事。
「そうなのか?なるほど君の話は娘からも聞いているから疑うつもりは無いがこれでも一応有名な会社のCEOを任されているからね」
「そういえばCNとの取引はうまく躱せたようですね」
「なぜそのことを?」
「蓮華さんは友人ですから」
(徳川蓮華、影の総裁なぜその名前を…)
「私も少し能力があるが、あの方に見込まれた少年がいると聞いていたが君の事だったのか、救世主が現れたと」
「救世主なんて大げさな」
「噂だが宇宙船や宇宙怪獣を撃退したのも君なんだろ」
「いいえ自衛隊の皆さんのおかげですよ」
日本の政財界は広そうで狭い、松田詩音と言う先読みの力に集う政財界の重鎮達。
その中で話される噂話は時として真実味の無いお伽話が多く含まれている。
そして何度となく聞かされるのだ、数千年を生きてなお日本のトップに君臨する化け物の話を。
徳川家に嫁ぎ大奥で20年以上タヌキやムジナを操ってきた人物。
もちろん歴史上はちゃんとお亡くなりになっているのだが、超能力者である彼女は今も蓮華と言う名でこの世に生きている。
メアリーさんの遠い親戚?であり生き物の生気を自分に取り込むことで何千年も生きている。
森山さんは本人にも会ったことがあるのだろう、多分歳を偽り変身した姿で。
(森山さんあなたのお嬢さんのそばには救世主がいるから大丈夫よ)
(救世主?)
(そのうち分かるわ)
黒髪で着物姿の妙齢の女性が目の前に現れてそう告げて行った、彼女に会ったのは通商産業大臣の紹介であり。
そこには総理大臣の秘書までいて、政財界の重鎮だとだけ聞かされていた。
それから数日が経ち惑星間転移装置の改良版である大陸間転送装置、そのパーツを勝手に他国へと売り払うという問題が起きた。
もちろんそれが世間に公表されたならば彼は禁止されている機材の国外輸出、今頃その責任を取らされていたはずだ。
少しの未来を先読みできても、さらにその先を読む者が敵にいれば逃れることなどできはしない。
まさか自分がそんな組織のターゲットになっていたなどとは夢にも思わなかった。
CNのエージェントに言われるがまま、交渉の席に着いた森山だったが。
まさかそこで娘の映像を見せられた時は頭が真っ白になり何も考えられなくなった。
まるで催眠術にでもかかったかのように1週間の記憶を断片でしか覚えていない。
そして数日が過ぎ、いつの間にかCNとの不正取引が消え去って。
横流しされるはずの大陸間転送装置のパーツは正規のルートでUKへと送られることになっていた。
しかもそれを覚えているのは自分だけであり、秘書の二人も専務でさえ横流しの事実は記憶していなかった。
「お礼を言った方が良いのかな?」
「何のことでしょう」
(表には出ないという事か、それもあの人の差し金か)
蓮華さんも表に出ないのだから、宗助もその方が良いと思っている。
全て丸く収まり悪いことがいつの間にか無くなっているのであればそれでよし。
21世紀のくノ一は今も生きている、但しその存在は今も隠し通されている。




