兄として
兄として
そこから先は4人で雑談をすることになった。
とは言っても話せることと話せないことがある、超能力を発現した彼には知っておかなければいけないことも色々あるのだが。
それはこれから起こることに対しての予備知識を持つという事と、超能力を持つことが良いことだけではないという事等々。
既に能力のデメリットを見ずからの体で体験しているのであれば、宗助のいう事も分かりやすいだろう。
彼のような能力者が今後も増えていくだろう、この世界にとってそれが良いことなのかどうかは別だが。
「それじゃお兄さんが全部?」
「全部じゃないよ、いろんな人の手を借りて何とか最悪になることを防ぐことができただけだし」
「あいちゃんこの事、知ってたの?」
「うーん少しね、あたしもこのあいだ初めて聞いたから」
「まあそうだよな、普通は信じないよな」
「そう言うことだ、でも力があるなら誰かがそうしないといけないだろう」
《ソウスケ大好きです》
話に入ってこないラケイスはどうやらかなり遠慮しているようだ。
別に話に入っても良いのだが、彼女にとって目の前にいる地球人の悩みや考え方はさほど重要ではないらしい。
いくつもの能力を持つ彼女は現在数百のスキルがあるがそのほとんどは封印してある。
解放している能力は30に満たないらしい、まあ人化の能力などは封印してあった能力の一つ。
通常暮らすために必要な特殊能力は、10もあれば足りる。
それは宗助も同じこと、ロボスキルで通常使用しているのはテレパシーと言語解析。
そしてAIスキルと後いくつかの力があれば、それだけでもスペシャルな生き方が可能だ。
「お隣のお姉さんは…」
恐る恐る言葉を発したのは、宇宙人であると知ってもなお確認しなければいけないと思ったから。
彼の好奇心はいくら相手が未知の生物だとしても、知らないで済ませることができないようだ。
それは宇宙人と一緒にいる同級生の兄が何事も無かったようにこの場にいること、その事に小さいながら疑問を感じていたからだ。
「私は惑星YAKから来た神王の一人なのです」
「やっぱり」
「だけどなんで?」
「彼女は遭難したんだよ」
「遭難?」
少し話を作って説明してみた、すでに宇宙戦艦も戦闘ロボットも。
さらに生体兵器ガイアギアなどと言った、信じられない物まで見せられて。
ただ単に転移能力だけで100万光年移動しましたというより、宇宙船が遭難してたどり着いたのが月だったと説明した方が分かりやすいと思ったからだ。
「そうなんですか、お兄さんは何でもありですね」
「そんな事無いよ、ちなみに僕は恥ずかしがり屋だから表舞台には出たくないし」
「えーイケメンなのに?」
「僕は自分がイケメンだと思ってないし、モテるとも思ってないからね」
(背も高いし頭いいなんて世の中はずるいよな)
「それじゃそろそろ行かないと」
「あ、どうも有難うございます」
「能力の事は秘密にね」
「はい!」
「おにいありがとう」
【本当にありがとう】愛菜
【できるだけ清い付き合いしろよな】
【なんでよ!そんなことしないもん!】顔がまっ赤に染まる愛菜
(そ そんなことしないし)
どう考えても妹の愛菜は彼に対して好意があるとしか思えない、だからと言って止めようなどと言った野暮なことはしたくない。
どうやら彼はなかなか良い奴のようだ、若いうちはいろんな経験をした方が良いだろう。
であるならば成り行きを温かく見守った方が良い、一応母に報告しておくことは忘れないけどね。




