初めて見る能力
初めて見る能力
その男子は高校1年クラブはフットサルに所属している、愛菜が通う有名私学にはスポーツ関係のクラブが多数あり。
約半数の生徒がスポーツ関係の特待生だという。
「あ いたいた待った?」
「いや それほどでも」
(実は1時間前からいたけど、それは言わないで置こう恥ずかしいし)
「あれ お兄さんは?」
「お店に付いてから来る予定」
「そうなんだ」
実は駅前でラケイスをお披露目するよりも普通に後からやってきた、という感じにした方が自然なのではと思ったからだ。
ちなみにラケイス、母や百合ちゃん達が連日連れまわしていたりするので。
本日は逆に周りの目の方が気になっていたりするが、商店街の人たちは既に何度か見ているのでさほど驚かなくなっていた。
「今日もその恰好なんだね」
「仕方ないだろ」
(マスクとフードを取ったら野人にしか見えない)
マスクにサングラス、そしてパーカーのフードを目深にかぶっている。
この状況では性別も人種も分からないが、その理由が開かされるのは宗助と会ってからになる。
店内に入ると愛菜が先に注文を店員に告げる、その男子は斜め後ろにいて終始黙ったまま。
「いらっしゃいませ~」
「店内でお召し上がりですか?」
「はい」
スペシャルバーガー2つとポテトのセットを頼み2階のイートインスペースへ。
昼食の時間には少し早いが、この時間帯なら本日はこの場所もさほど混んでいない様子。
「奥へ行こう」
「分かった」
どうやら彼の外見には現在大きな問題がありそうだが。
数分してから宗助とラケイスが2階のイートインスペースへとやってきた。
本日のおすすめセットを2個注文し、トレーに載せて現れたが。
ほぼそこにいた全員が宗助ではなくラケイスを見てギョッとする。
もう何度も見た他人の驚く顔だが、背が高いというだけでそれほど地球人との違いは無いはずなのだが。
「こっち」愛菜
「そこか、待たせたね」
「え!」
向かいの席にラケイスと共に腰かける宗助、腰かけたと同時に問題の友人が何を悩んでいるのかを分析してみる。
【形体変化、さらに読心もしくは思考解析かな、相手の考えが分かってしまうそんな能力】
【一つは獣化能力の様です、お話を聞いてから判断することをお勧めします】
宗助が来てもフードやサングラス、そしてマスクを取らない所を見れば。
彼の悩みの半分は既に解析が完了したも同然だが、それを知ったとしてどうやって彼の悩みを解決するというのだろうか?
「こっちがうちの兄で、隣がラケイスさん」
「マジ!」
(宇宙人!)
「どうしたの?」
「いやなんでもない、僕は愛菜さんの友人で保坂猛と言います」
「よろしくね、君の能力が発現したの最近?」
「え?まあそうです」
(言わないとだめだよな)
「不登校は外見の変化か、獣化現象もしくは獣化能力」
「ええ、その通りです」
「その他にもありそうだね」
(なんでわかる!)
「そ それは…」
「相手の考えが分かる能力」
「そうなの?」愛菜
「全部じゃないよ」
(全部わかるなんて言えない)
「それはどんな形で?」
「声が聞こえるんです」
「君はその力をどうしたい?」
「制御したいんです!」
獣化と言うのはほとんどが先祖返りみたいな能力だと、一般の人なら考えるだろう。
だが超能力での獣化能力は少し違う、人間の持つDNAは進化と共に様々な変化をもたらしてきた。
少しでもDNAが違えば今の形はあり得ないぐらい、今の姿は数億いや数京もの生物の遺伝子が絡まり進化してきた証と言って良い。
その遺伝子のどこに作用するかによって獣化もかなり違ってくると言って良い。
「僕の獣化能力は犬(狼)だと思います」
マスクを取りそしてサングラスを外すと毛むくじゃらの顔が姿を現す。
フードは外せないらしい、もしかすると耳の位置がかなり違う可能性が有る。
ややマスクの中央が盛り上がっているところを見ると、鼻の位置や牙などと言った変化があるのだろう。
「自分の力で元には戻せないのか?」
「自分の意志では難しいですでも24時間すれば自然に戻ります」」
「訓練が必要なのかもな」
「そうかもしれませんが、ある条件でまた元に戻ってしまうのです」
要するに今年の夏は人間の姿で過ごせたが、秋が過ぎ冬近くになって獣化してしまった、という事だろう。
「ある条件?」
「え~と女性を見るとで す…」
「あーそういう事か、なるほどね」
「何?二人で何うんうんって」
【愛菜様、性的な話になりますが、詳しい説明が要りますか?】
【リリーちゃん、え?性的】
【少しお勉強いたしましょう】
愛菜にはそちらの経験値がまるっきり欠損しているようだった、そちらは俺の相棒であるAIのリリーに任せるとして。
こちらは目の前の課題に向き合うこととする、どうやったら能力を制御することができるのだろうか?
相手の考えが声として聞こえる能力は、秘密を知っても相手に言わなければ問題ないだろう少し人間不信になるぐらいだ。
だが獣化は何とかしないと周りの目が気になって普通に生活ができなくなってしまう。
【スキルロボの光学迷彩バージョン3ならば隠せるのでは?】
【それだと接近すると肌の色や感触が隠せない時があるよ】
【一度ロボ化して獣化の原因を解析してみてはどうでしょう】
【その方が早そうだな】
「ソウスケ、私の考えは居りませんか?」ラケイス
「解決策がありそう?」
「はい」
数百の超能力を持つラケイス、その中には相手の能力を抑制する力や能力自体を制御するものまであったりする。
《この力なら解決できるのではないでしょうか?》
《どんな力?》
《その力は人化の能力です》
本来人間ならばそのような力は必要ないのだが、多分ラケイスが竜人族か又は竜族から手に入れた能力なのかもしれない。
《その力を植え付けるという事?》
《宗助様ならできるのでしょう》
《副作用は?》
《そこから先は私にもわかりません、使用するかどうかは宗助様にお任せします》
【リリーさん解析できそう?】
【このファイルですね、解析します10%20%50%、完了しました】
【使用条件がございます、変身時に500kカロリー消費します】
「ちょっと食べるのは待って」
「え?」
「今から君に能力を付与するから」
話が中盤に差し掛かり少し間が開いたところで目の前にあるハンバーガーを手に取った猛君、何故制止されたのかは少し気になるが、その代わりに制御できるスキルを付与してくれると言われれば、文句などあるわけがない。
変身能力しかも人への変身、だがその力はカロリーを消費する。
その数値は500kカロリー、そう目の前にあるハンバーガー1個とちょうど同じカロリーだった。
一つ目の条件は食べた直後に力を使用する事、タイムラグは5分以内でありその後数秒でカロリーが減っていくのでチャンスを逃すと発動しない可能性もある。
もちろんエネルギーが不足して足りない場合は即座に追加のカロリーを補充する必要がある。
そして二つ目の条件が2時間おきに200kカロリーを消費するという事。
要するに人間の姿を維持するためには常になにかを食べ続けることになるのだが。




