裏取引は闇の中
裏取引は闇の中
部下を10人以上引き連れてやってきたのは湾岸地区の倉庫だった。
そこで行われるのは規制されているはずの超小型発電装置の受け渡し、日本のとある企業が開発した優れもの。
これとは別に超小型蓄電池という物もEU経由で手に入れるはずだった。
だったというのは、今ではその事実自体が無くなってしまったからだ。
記憶にあるのは輸入規制のかかった医薬品の取引。
この2つがいつの間にか入れ替わってしまい、目が覚めたのは車の中だった。
「おい、目を覚ませ!」
「はい…」
「お前もだ!」
「ここは?」
「見たらわかるだろう」
「車の中?」
「あいつら寝てるぞ」
「バタン」
「おい!」
藩達はこの場所に車3台で駆け付けた、ESP部隊の6人と補佐役の4人。
そして藩とその直属の部下2人。
ESP部隊の6人はほとんどが身体能力に特化した超能力者であり、精神汚染に対する防御能力者は一人もいなかった。
既に森山は操り人形であり、精神汚染能力者はこの日、別の人物を鹵獲する任務へと出ていた。
何の問題もない、全て順調にいくはずだった。
それがなぜか失敗した取引に置き換わっていたのだから。
「おいお前たち、今日の任務は知っているな」
「ええ取引制限のある医薬品を受け取るはずですが失敗でしょうか?」
(そ そうだったか?)
「どうして寝てる!」
「確か取引の間に煙を吹きかけられて…」
「眠り薬」
「金は!」
「無いです」
「やられた、だけど俺達なんで車の中に?」
「プルルル」
『なんだ』
『警察の足は止めた あるネ』
『分かった』
数日後、藩は本国へと帰っていく。
そこから先に彼がどうなるのかに関しては知るすべもないが。
場合によっては役職を追われ今の地位から脱落することになるだろう。
そうなればまた別な人物が日本へと送られてくるかもしれないが。
どんな人物がやってこようとも、間違ったやり方はいずれ正されなければならないし。
そんなやり方がうまくいくのは最初だけ、いずれどこかで綻びが発生し物事の流れは自然と修正されていくことになる。




