ここは闇取引の現場
ここは闇取引の現場
湾岸署から4kほど離れている港の倉庫、そこを見張っているのはシオン会所属のエスパー。
本日この場所で秘密の取引があると聞いてやってきた。
シオン会からは2名が情報収集にやってきているが、別に取引の妨害をしようという事ではない。
何が行われているのか取引の全容を調査する、取引の内容や訪れた人物を全員視覚と聴覚においてとらえておくこと。
何かあった時にはシオン会から松田グループへと問題として提起する、特に政治の場で使用する材料とするわけだ。
「あれは?」
「アムテルの日本支社長、後から入ったのは藩兆穀のようだな」
「録音頼んだぜ」
「まかしとき」
300メートルほど離れた建物の最上階、そこから超望遠レンズで見ているのはある国が所有する倉庫。
映像と写真だけではない、音声も普通ならば壁の向こう側ではなかなか録音などできないのだが。
聴こえた音を何十倍にも増幅させ精密に再現できる能力があればこんなこともできたりする。
伝達音源復元能力、それは秘密捜査に適した力だった。
【これが小型発電装置のサンプルだね】
【ええそうです】
【後の品は?】
【本国からFR経由でお届けする予定です】
【わかった】
壁の向こうだというのにその音を聞いてこの場で全く同じ音を再現できる能力。
それをレコーダーに記憶させておけば、どんな取引を行っているのかはすぐにわかる。
「これで終わりのようだな」
「それじゃ切り上げますか」
「いやまて」
その目に映ったのは人が何かにぶつかって弾き飛ばされる映像。
【バキン】
【ドン】
【ドズン!】
【ナンダ】
【ナニガオコッタ!】
警察の突入ではない、パトカーなど一台も現場に来ていないのだから。
だが、何者かが外で待つCN側の部下を一人ずつ片付けていく。
ものの数秒で倉庫の外にいたはずの見張り数人が地面に倒れうめき声を上げている。
シオン会所属の諜報部員でさえ特殊な超能力を使用しても、誰が行っているのかまでは分からなかった。
「敵対勢力か?」
「もう少し見て行こう」
どうやらその誰かは倉庫の中へと入っていくようだが、中まで入ると音声しか聞こえなくなってしまう。
「ガチャ」
「だれだ!」
「パシュパシュン」
サイレンサーを付けた拳銃の音は本来そ300メートルも離れた場所では聞こえるはずが無いのだが。
超能力さえあれば何発撃ったのか、それが敵に当たったのかぐらいは分かってしまう。
「当たっているな、だが無傷!」
「じゃああいつらを襲っているのも能力者か?」
「ああそれ以外には考えられない」
こんな場所へ姿を隠してやってくる超能力者、そんなことできる人物はシオン会にもNADLにもいなかったはず。




