音感
音感
誓がコテンパンにした相手は身体能力強化と治癒能力を持っていた。
以前の誓だったならこんな危険な任務に進んで対応しようとは思わなかっただろう。
数日前に手に入れたロボスキルの身体強化システム。
宗助によって細かい設定を施された自立AI搭載型身体強化能力。
LV5まで上げておけば約10倍のパワーを出すことができる、普通に暮らしていればLV1でもかなりの防御能力を発揮できるのだが。
相手が能力者であるのならばLV1のままというわけにはいかない。
「くそ!逃げられたわ」
「長官」
「どう?音は拾えた?」
「ここから2k先の倉庫にそれらしき声がしましたが、そこからすぐ車で移動しています」
「追える?」
「追うのは難しかと、この先は情報カメラで確認した方が早いですね」
「残念」
「でも話の内容に気になることが…」
「何か分かったの?」
「おそらく囮なのではと」
「もう少し詳しく」
何のための囮なのか?そこをもう少し詳しく知ろうと思った誓だったが。
音声ではそこまでの詳しいことまでは聞き取れなかった。
吉住姫歌が持つ超能力は音に関する能力だが、地獄耳で聞き取れる距離にはいくつかの条件がある。
一つは障害物の有無、もう一つは距離。
海を隔てた場所の音を探るには周波数という微量な電波を探知するのだそうだ。
50k以上のスピードで移動している物体の音までは拾うことができないらしい。
「これ以上は追えないという事ね」
「長官!」
「木島君」
「敵は?」
「逃げられたわ」
「そうですか」
「派手にやられましたね」
「姫の話だとこれは囮だそうよ」
「じゃあどこかで裏取引があると?」
「でもこれじゃ難しいわね」
取引現場に一番近い湾岸署の警察官20人近くが重軽傷を負っているという。
こんな状態で任務続行しろとは、誓でもそこまでの命令を出すことはできなかった。
「ピーポーピーポー」
「ウ~~」
「とりあえず手分けしてケガ人の救護ね」
「了解です」
この後、秋元警部補と小川巡査長が数分後に駆け付けてケガ人の対応に追われた。
ここから敵の悪だくみを阻止しようと深入りしたとしても、すでに取引は終わっている可能性が高い。
ならばCNのESPスパイが逃げた方向にある、防犯カメラや情報カメラの映像を調査した方が良いだろう。
そして今回の事件、カレン隊には宗助から蓮華経由で事件の概要が伝えられることになる。




