藩兆穀(ハンチョーコク)
藩兆穀
CNの科学技術省のトップであり次期副首相である藩は惑星間転移装置の国内導入を進めるべく情報操作に奔走していた。
いや奔走しているのは部下達だけなのだが、彼らの科学技術は確かに西側と比べても遜色ないほど発展している。
だが彼らの首長は製品単位の信頼性までは信用しておらず、その作り方はまだ雑だと言えよう。
そして惑星間転移装置を作るには技術者だけではなく日本の技術力や様々な資材が必要となる。
日本とUSAにおける惑星間転送装置の運用条件の一つにその3つのレベルが、一定以上に満たなければ運用許可が出せないことになっている。
ODAで80%以上無償供与される発展途上国であれば、それらを先進国側の援助で賄えるがCNの場合は立場が違う。
既に自国内で様々なAI機器を作れる国に支援などする必要が無いからだ。
資金と人材は確保できた、そして次に必要な物を手っ取り早く手に入れたい。
ESPという便利な力を手に入れたならば、その力を使って優位に立ちたいと思うのは当たり前だと思うのだが。
既に日本ではどの組織も何らかの形でCNとのつながりを持つが、敵対しているEUやUSA関連の企業はCNに対する対応がかなり違うと言えよう。
特にエレクトロニクスの最先端を担う外資系企業、日本でさえその企業からの商品が無ければ作れない品があるほどだ。
それらの流通を一手に引き受けているのが森山省碁日本アムテルの支社長だったりする。
傘下にはエネルギー関連企業もいくつかある、EUでは有名なIT企業である。
『おーそうか、うまくいったか』
「すみませんね、急な連絡で」
「構いませんよ、それで要件とは?」森山
ここは某ホテルの会議室であり、現在CNの運輸公司とアムテルの日本支社長が商談を行っている。
実はCN、日本やEUが扱う輸出規制のかかっている装置の購入を打診していたりする。
この場にはもう一人日本の外務次官が同席しており、輸出規制解除に向けた話し合いが行われていた。
「ですが武器転用が可能な装置はそちらの国には出せませんよ」
「我が国ではそちらの装置を使って武器などを作ることはありません、私の話では納得してもらえないのですか?」
「その件は先日もお話ししました」
「そこを何とか緩和していただきたい、そうなれば日本と我が国の間での輸出入もさらに良くなるのですよ」
「まずは規制の緩和には守っていただくことがいくつかあります、そちらを守れないのであれば装置の輸出は出来かねます」
「なかなか厳しいですな」
「以前そちらの国に他の企業から輸出した技術で、誘導型AIミサイルを作りましたよね」外務次官
「それはデマですよ、我が国にそこまでの技術はありませんよ、ははは」
「どちらにしても規制を取り払うには、いくつかの条項を尊守していただくのが大前提です」
「そうですか、ならば我らも奥の手を使うしかありませんな」
「奥の手?」
「パン、パン」
「お呼びでしょうか?」
「あれを」
「かしこまりました」
持ってきたのはタブレットだが、そこに映っていたのは森山胡桃だった。




