その日の晩
その日の晩
5人分の買い物はかなりの量になった、当然のことながら帰りはタクシーを利用することになり。
2台に分乗して家へと戻ってきた。
そして帰ってくるとそこには愛菜が待っていた。
「ただいま~」
「ただいまでーす」
「皆、遅いー」
「ごめんなさいね道が混んでて、今用意するから」母
【宗ちゃん後はお願い】
【了解】
「どうした?」
「なんでもない」愛菜
【どうやら試合中にアクシデントがあったようです】リリー
戻ってきてすぐに荷物を運び、本日愛菜に付けていたカメラの情報を確認してみる。
確かに愛菜の動きは他の選手と比べてもとびぬけている。
そして試合相手のチームの選手からひどいタックルを食らってしまうシーンが映像に残っているのだが。
【これって相手の方が悪いはずなのに、審判何処を見てるんだ?】
【怪我をしたのは相手の選手ですね】
ゴール前までテクニックで運びパスを出すところで愛菜がタックルを受ける。
そんなシーンはサッカーをする選手なら幾度となく経験するはず。
だが相手の選手のタックルはかなり悪質だった、すでにボールはパスされており。
愛菜の足元から離れて数秒経った後で後ろからのタックル。
どう見てもレッドカードは相手の選手が食らうはずなのだが、愛菜はそのタックルを躱して敵の選手の足を踏みつけてしまった。
【イエローをもらったわけか】
【残念です】
【そういう悪巧みに長けている選手が相手じゃ仕方がない】
タックルして相手がケガをすれば儲けもの、自分がケガをした場合は大げさに騒いで相手のせいだと主張する。
これが駆け引きだとしたらけがをした選手は相当の食わせ物だろう、リリーズのカメラから別角度の映像も見てみる。
相手の選手は痛さをこらえているのではなく笑いをこらえている場面が映し出される。
【慰めに行くか…】
《アイーナは悩んでいる?》
《彼女はお年頃なんだよ》
《あー自覚乖離とかいうやつ、もしくは年齢疾患》
どちらも地球の言葉ではなく惑星YAKでの考え方による翻訳だったりする。
ラケイスは現在アイリーンたちの部屋にいて、ファッションショーを楽しんでいる。
時折指向性を変更して話しかけてくるのは、地球人の若者があまりにも自分とかけ離れている行動をしてくるのが不安だからだ。
目の前の2人とは違う雰囲気を持つ愛菜に興味がわいたらしい。
「コンコン」
「入っていいか?」
「いいよ」
「バタン」
「どうした?」
「あたし、なんか変なんだ…」
「どこが変なんだ?」
「足が速くなったのはいいんだけど、最近は相手選手の動きまでわかるんだ」
「すごいじゃないか」
「そうかも、でも何かおかしいって、あたしどうなっちゃったのかな…」
「教えてあげようか?」
「何か、知ってるの?」
もちろん俺の能力の話だ、愛菜も薄々感づいているが今まで黙っていたのは、いつか俺が話してくれると思っていたからに過ぎない。
「やっぱり」
「あの日、母さんを助けた力は、事故が起こった時手に入れたんだよ」
「それじゃ私のこの力も?」
「そうだと思う、アイは身体能力強化という超能力を手に入れた」
「そうなんじゃないかと思ってた」
「ある程度は表に出して構わないけど、あまり使うとずるいって思われる」
「うん、だから少し加減してたんだけど、後ろからのタックルはよけるでしょ」
「それは構わないけど踏みつけてしまうのはだめだよね」
「反省してる」
「よけてわざと転べばよかったんじゃないかな」
「その手があったか…」
「まあ今回は相手が悪かったよ、あの子も能力使ってたみたいだから」
「そうなの!」
「フェイクマウス、嘘を信じ込ませる能力か、もしくは審判に対して自分の言葉以外を聞かせない能力かな」
「ねえおにい」
「ん?」
「今の日本っておかしくない?」
「日本どころか世界がおかしくなってきていると思う、まあそうしないとまずい事件が多くなってきたからね」
「宇宙人の襲撃も原因ってこと?」
「ニュースで知っていると思うけど、宇宙人は全員超能力者だって」
「うん」
「彼らに対抗するためなのか、それとも彼らが来たせいで地球人も覚醒したのか、どちらにせよ愛菜だけじゃないよ。皆 何らかの力を身に着ける可能性が有るってことなんだよ」
もちろん俺の能力でテレパシーを使用できるようにしたが、俺と母だけではなく他の女性陣がいつの間にか自分の知らないことを共有していることは知っていたりする。
それを不思議に思わない人はかなりののんびり屋さんと言えるが妹は脳筋な訳ではない。
知っていても話してくれるまで待っていたのだ。




