愛菜が覚醒した
愛菜が覚醒した
取り敢えずUSAのサバイバー達にお別れを告げて、自宅の屋上へとジャンプしてきたのだが。
日本での現在時間は既に朝2時を回っている。
ゆっくりと物音を立てずに屋上の窓を開けると、なぜかそこには愛菜が立っていた。
「おにい、私に隠していることない?」
【まさか、この時間に起きているなんて…】
【申し訳ございません、お知らせが遅れました】
【もしかしたら俺が帰って来るのを狙っていたとか?】
【可能性は否定できません】
「あるよ」
「そうなんだ」
「愛もあるだろ」
「え!」
そう、ある筈なのだ昨年と比べたらその変化は誰もが気付くはず。
足の速さはもちろんのこと、他にもいくつかの変化が見て取れる。
「お兄にはやっぱ隠せないか…」
「そりゃお前の兄であり、よき理解者だからな」
「聞いてほしいことがあんだよね」
「勉強のことか?」
(ちがうって)
「それは大丈夫、うちは結構頭の良い家系みたいだから、そうじゃなくて…」
「加速能力か?」
「やっぱり」
「他にもあるんだろ」
「うん」
「多分、愛の体に起こっている変化は身体強化系の超能力だと思う」
「身体強化系?」
「ああ、超能力の一つで体の能力をアップさせる、例えば筋力や聴力だな」
「最近、あたしも含めて不思議な力を感じる子が増えて、皆 不安になっているんだけど」
「悪用しない限りそれほど問題は無いと思うよ、まあ少しセーブした方がいいかもね」
「そうなんだ、この間身体測定で垂直跳び4メートル超えて、ヤバかった」
「3メートルぐらいで止めておかないと、100メートル走も10秒台にしておいた方がいいよ、そうしないと次のオリンピックに呼ばれてしまうかもしれないからね」
「それは…できればサッカーで出たいけど…」
超能力、しかも身体能力に特化していたのなら彼女の場合スピードだけとは限らない。
筋肉は体全体に存在し、その力がアップしたのならば動態視力も上がっているはず。
「目立ちすぎるとそういうところで面倒になるからね」
「もしかしてお兄も?」
「こんな時間に屋上から侵入できるって、それだけでおかしいと思うだろ」
「うーん、でもお兄ならできそうだと思っていたから、あまり気にしなかったんだけど」
「この話は愛の部屋で続けよう、エントランスでは寒すぎる」
「分かった」
まあばれていたとしても愛菜はそこまで俺に対して疑問を持って接していなかったようだ。
聞けば教えてくれるだろう?って感じだったのかもしれない。
彼女はそんなことよりサッカーの試合の事で頭がいっぱいだった筈なのだ。
愛菜の部屋に入るとさすがに百合ちゃんや母、そしてアイリーン迄がこの話に加わって来る。
【お帰り宗ちゃん】百合奈
【ただいま】
【今アイちゃんの部屋?】
【そうなんだ、愛の奴も自分の能力に気が付いたみたいだ】
【ヤッパリ】
【何かできることは無い?】
【今の所は無いと思う、でもやはり通信能力は付与しておいた方が良いかも知れないな】
【その方が良いわ】母
【そしたらみんなで話せるね】エミリア
【あなたは少し自重して】アイリーン
【え~】
愛はベッドに腰かけ、俺は勉強椅子に座る。
外はまだ薄暗く星が瞬いているが母が起きてキッチンの方へと降りていく。
神王様はゲストルームでお休みのようだ、すでに全員とあいさつは済んでいるため、彼女のことも聞きたいところだろう。




