神王は自己中が普通である
神王は自己中が普通である
地球時間で200と数年、引力の小さい惑星YAKでは1日で地球の4日ということらしい。
地球の約5倍ほどの大きさがあり、惑星RIZの約2倍、重力は0.7倍と聞いている。
それならば惑星YAKでの彼女の年齢は50歳前後ということになるが、一応地球時間で換算にした方が分かりやすいだろう。
そして神王として君臨している彼女はわがままであり無垢でもあった。
《そうなのですか?》
《私たちの星も一度惑星RIZからの宇宙戦艦で攻撃されたのよ》
《それを撃退したのが彼なのね》
《本人は違うと思っているけどね》母
《彼ならすぐに神王になれるのに…》
《それはだめよ、宗ちゃんは地球の救世主なんだもの》
《欲しい》
《あげないわよ、というよりそんなこと他の子達が許さないわ》
《私に匹敵する能力者が他にいると?》
《そういうことではないわ、人を好きになるということを、あなたは能力の優劣で図るの?違うでしょ》
《うーん、それなら作りましょう》
《作る?》
《私の能力で彼のコピーを作りましょう、それならば問題ないわ》
《それが出来たとしてもだめよ、無尽蔵にコピーを増やしても他人に取られたらいやでしょう》
《少なくとも1体は独り占めできるわ、どうしてダメなの?》
《コピーでも全て同じではなくなるでしょ、それはコピーであって本人ではない、いつかその違いによってあなたが嫌われてしまうかもしれないでしょう》
コピー、それが出来ればどんなに良いか考えたことがある人はいっぱいいるだろう、但しそれが現実化したらかなりまずいことになって来る。
どれが本人かわからなくなるし、悪いことをしても言い逃れするのが簡単になる。
それに年月を重ねればそれぞれが違う自我を持ち、記憶も行いも変化していくのだ。
《それは嫌だわ》
《あなたは神王に近い人物にもそういうことをするの?》
《しないわ、自分はしたけど他の神王を作ったりはしない》
(確かに他の神王は作っていない、コピーにも一応ルールがあるし)
《分かったわ》
19時間の時間差があるので、日本はまだ夜の11時。
百合ちゃんもアイリーン姉妹も現在は自室で勉強中。
父は今晩研究所に泊まるらしい、超小型発電所に使用するシステム開発が大詰めを迎えているということだ。
【私も話に混ざりましょうか?】百合奈
【いいえそれは明日の朝で良いわ、それより勉強頑張って】
アイリーンからも申し出があったが、このことはできれば他に漏らさない方がいいだろう。
呂方・木下宅にはこれまでもいろんな国からの来客があったが、宇宙人の来客はこれで3人目である。
ご近所様には父である敦之の仕事柄、外国の方々との付き合いが多いと話してあるので問題は無いと思われるが。
ラケイス神王はいくら西欧風の外見だとしても、普通の人ではないとすぐにわかってしまう。
早急にこの外見を普通に見えるような洋服を手に入れる必要がある。
【ママ様出来ました】
【ありがとう】
来賓用の部屋に腰かけてもらい、採寸すると買い置きの生地を寸法通りに切っては縫い付ける。
居間では最近手に入れたミシンを置いて、洋服の縫製をフィギュアたちに手伝ってもらっている。
フィギュア3体に手伝ってもらうことで、1時間余りで下着とドレスそれといくつかの服を完成させた。
《これを着てみて》
《これはあなたの能力なの?》
一応フィギュア達の光学迷彩は解いてもらっているが、宗助の能力だとは話していない。
《この能力は秘密なの》
《私たちの星にいるフライ(メディロン)と似ているわね》
《フライ?》
《ええ、妖精族とも呼ばれている、スピリチュアルな存在よ》
《あなたは彼らの存在を知っているのね》
《えーと、彼らはそれぞれが星と同等だと感じているわ》
(フライの話をしてまずかったかしら)
精霊や妖精、どちらにしてもそれらの生物が存在していることは知っているらしい。
《もしかしたらこれも彼の力?》
(あら)
《大丈夫よ、誰にも言わないし彼を困らせたりしないわ》
《ありがとう、そうしてもらえると助かるわ》
《まだ小さい?》
《胸の所が…》
伸縮する素材で作成したのに、筋肉の動きが地球の人間と少し違うらしい。
それと彼女の持つ能力によって、服に対して異物指定が働いているようだ。
《ここまでだわ、サイズは合っているから後は宗ちゃんに何とかしてもらった方が早いわね》
《彼はそんなこともできるの?》
《えーと》
【母さん、今大丈夫?】
【大丈夫よ、そっちはどう?】
【取り合えずUSAのサバイバー達には待ってもらえるよう頼み込んだよ】
【こっちはようやく着る服ができあがったわ】
【ありがとう、あの姿だと目のやり場に困るからね】
【でもどうするの?】
【瞬間移動で連れてくるしかないと思う、どうせパスポートなんてものは無いんだし】
【それじゃ着せ替えたら連絡するわね】
作成したのは下着とドレスに近い、そしてジャケット。
季節は既に秋の終わりを告げている、それならば上に羽織るような服も合った方が良いだろう。




