東教大学
東教大学
入学してすでに半年が経つ、夏はいつの間にか勉強と野暮用(惑星旅行)に費やされた。
女子と同居しているのだからもっといろいろあっても良いはず、などと思うやつは彼女らとの同居など夢のまた夢。
大学とは思っていたほど楽な場所ではない、論文もそうだが教授のゼミへ参加する日程がかなりタイトにあったりする。
この状態で彼女らとどこかのクラブへ入る、などというリア充な生活を望んではいけない。
まあ同居している女子はそちらの方の期待が勉学よりは上だったりするが、まあそんなことを気にしていては宇宙のことも地球のことも救うことなどできはしない。
スキルロボと言う能力を手に入れた宗助、周りの学生をうらやむことなど無いと言っておこう。
だが、宗助の見ていない場所ではなかなかスリリングな事件がいくつか起こっているようだ。
「百合ちゃん」
「何?真純ちゃん」
「今度の木曜日、親衛隊の出番だよ」
寺島真澄、東教大学1年生教養学部、もちろん演劇部という部活に所属しており百合ちゃんとはお友達になった一人。
そして演劇部には現在20人以上が在籍しており、森山胡桃とも面識がある。
「ボディーガードの日ね」
「それでね、この腕章を着けて置いて」
渡されたのは布でできた腕章、ファンクラブで手に入れることができる品のようだが。
百合奈はファンクラブには所属しておらず、学内だけのボディーガードという形だ。
「真純ちゃんと二人で?」
「そういうこと」
「真純ちゃんってファンクラブにも入ってるんだ…」
「百合ちゃんは入らないの?」
「そこまで熱心ではないかな~」
胡桃が出演するドラマは見ることがあっても、舞台を全て見るような追っかけまではするつもりがない百合奈。
胡桃の行く先々で応援するというオタクのような応援など百合奈にはできないだろう。
そんな時間も無いし、他にもやることがいっぱいある。
現在もピアノの練習は欠かさず続けており、部屋には電子ピアノを置いてある。
週に1日はレッスンの日と決めているのだから。
「そっか、まあそこまでは無理強いしないけど」
「ごめんね」
ここまではさほど問題など無いと思っていた。
だがこの週の木曜日、大学へとやってきた胡桃を待ち受けていたのは、どこかの国の工作員達だった。
『A班、準備はいいか?』
『こちらは準備完了』
『校内に入る前に始めるぞ』
『ミンパイラ』
あらかじめ胡桃が登校する日はリリーズを1体、宗助が胡桃のボディガードを兼ねて警備に行ってもらっている。
何かあった時に素早く対応するにはそれが一番だと考えたからだ。
別に百合奈から頼まれたからではないが、大学への不法侵入事件以降。
どう見ても学生には見えない人物が大学の外でもうろついていることが多くなってきたからだ。
狙いが誰なのかまでは分からないのだが、それを黙って見ているわけにもいかない。
「おはよう」
「おはよう百合ちゃん」
「おはよう」
「おはよう真純ちゃん」
大学の正門から少し離れた場所で送り迎えの車から降りた胡桃、出迎えた百合奈と真純が挨拶すると。
マネージャーとみられる人物も正門迄同行するようだ。
「私こういう者です」
「マネージャーの楠木さんよ」
「よろしくお願いします」
USSJの中堅マネージャー。
胡桃のジャーマネになってすでに5年が経つ、そして彼もサバイバーだったりする。




