何故一緒に来る
何故一緒に来る
今回の実験宗助の父は発電システムの方へ回っている、彼の作った蓄電池は当初転送装置に使われる以外には想定していなかったらしい。
だが新しい発電システムを開発したとなると、そこにも使用できないかと言う新型発電システムの制作会社からの要望があり、急遽そちらにも父の作った蓄電池が採用されることが決定したからだ。
転送装置に使われている蓄電池システムは小型のものだが、発電システムに使用するとなると数十倍もの規模になって来る。
新たに開発したシステムは思いのほか高性能になり、当初の発電量を倍加させただけではなく発電する時のロスを20%も軽減することに成功した。
要するに転送実験は成功しているのだから、各国の要人と話すより自分の研究の効果をまじかで見る方が重要だということだ。
「リーさんは残らなかったのですか?」
「あそこにいても楽しくはないでしょう」
「僕についてきても何もないと思いますが…」
「宗助と一緒にいた方が楽しいですよ」
【完全にロックオンされたな】
【どこまでついてくるのでしょうか】
【家までかな~】
「どこかでお食事でもしませんか?」
【宗助様から何か得るまで帰らないのではと思われます】
【そうなるとまたロボ化して記憶を操作しないとダメか…】
【リー様の行動は仕事だけではなさそうです】
宗助に近寄る女性はほぼ間違いなく彼の引力に引き寄せられてしまうらしい。
今までも何度か女性に付きまとわれたことがあるのでさほど気にはしないのだが。
相手がCNのスパイであり才女となると、今までのようなわけにはいかなくなる。
実験場からはタクシーに乗り数分、街道沿いのファミリーレストランで食事をすることになった。
取り敢えず中途半端な時間なのでコーヒーと軽食で済まそうと思ったのだが。
「宗助はESPという物を信じていますか?」
「ESP?超能力の事?」
「はいそうです」
「あったら面白いとは思いますが、能力によっては大変苦労しそうな気がしますね」
「私はどんな能力でも自分のプラスになればそれでいいと思います」
「そうなんだ…」
「私にも能力があると言ったらどう思います?」
「そうなの?」
「冗談です、でもいつかそうなるような気がします」
「どうして?」
「私は両親に世界をまたにかけて仕事をするような人になれと言われています」
「へ~世界を見て回るのも面白そうですね、CAはどうです?」
「CAは私には向いていないと思います」
「リーさんぐらい日本語も英語も話せるのならすぐになれるのでは?」
「よく言われます」
外見的にはどこの航空会社のCAでもできそうだが、客室乗務員はいかなる時も笑顔で対応しなければならず中々大変な仕事だと聞いている。
「日本へ来たのもその一つですが、世界を飛び回るようなそんな仕事をしたいのです」
「外交官になりたいということですか?」
「大きな会社の秘書でもいいですが、そのためには私を使ってくれる組織または個人が必要なのです」
「そうなんだ…」
「聞いていますよ、宗助はUSAの大統領やUKの大臣とお友達だと」
【そう来たか、確かにここ1年ぐらいでそういった人達とのつながりは増えた】
【そろそろ情報がCNにも漏れ始めましたね】
【まあある程度は覚悟していたけどね】
「宗助の秘書になれませんか?」
そういった人物を雇うような仕事をしているわけではないのだが、どこを調べて俺に秘書が必要だと思ったのだろう。
もしかしたらアプリの事や特許関係の収益を見られたのかもしれない。
惑星間転送装置やハッキングアプリの特許は数百に及ぶ、開発に携わるメーカーより先に日本での申請を済ませて置いたおかげで、その使用料として宗助の懐にかなりの金額が積みあがっている。
登録人の記載に俺の名前があるのだから少し調べれればすぐにわかる。
「転送装置の開発に必要な特許の半分にあなたの名前がありました、転送装置の開発者でなければ特許の申請はできないはずですよね」
「多分それは父が僕の名前を使ったのかもしれない」
「御父上が?」
つじつま合わせにはそろそろ限界か、頭のいい人にはこういった嘘は通用しない。
ならばどうするのかと言うと。
【ロボ化しよう】
【かしこまりました】
ファミレスの椅子に向き合って座っている、すでにコーヒーとサンドイッチは運ばれてきており。
それに手を伸ばすことなく、彼女と話しているのだが。
この先彼女の質問によってどんどん俺の秘密が暴かれていくのだろう。
ならばすることは一つ。
(少し眠っていてね)
【スキルロボ】
リリーズの1体は常に同行してもらっていた、彼女の体にフィギュアの手が触れさえすればスキルによって彼女のデータを操ることが可能になる。
既にリーさん一度ロボ化したことがあるので彼女がどこまで知っているのか、その内容自体は殆ど把握している。
問題なのは彼女の知っている俺の秘密をどこまで隠すのか、嘘の情報を与えてこれ以上知られないようにするための作業だ。
嘘を植え付けてもいずればれるのならば、本当のことをいくつかデータで与えて。
それ以上秘密を洩らさないように操作してしまおうか?
いくつかの作戦を練りながら、目を瞑ったリーさんを前にリリーさんと相談する。
【ESP、超能力のことを少し明かしておこう、だがその先は秘密にするよう説得する方がいいかもしれない】
【宗助様の言うことには逆らえないように細工しておくのですね】
元々彼女の記憶の中に宗助に対しての好奇心だけではなく好意がある、それを利用して宗助に嫌われたくないという気持ちを植え付けたらどうなるだろう。
いくらスパイが仕事だとしても宗助に話さないでほしいと頼まれたならどうするだろうか?
しかも彼女の記憶の中にある善意のパラメーターを上げておくとしたら。
確かに俺が持つ情報を求められたときに、どこまで話してしまうのかは分からないが。
今までも完全記憶と言うスキルの話は数人に話したことがある。
ならば超能力としてその情報だけ伝えて納得させておけばそれ以上あまり詮索しないのではないだろうか。
あまり記憶をいじるのは俺としても避けたいところだが、相手がCNの情報スパイと言うのならある程度は仕方がないだろう。
【データ改竄完了しました】
【ありがとう】
「え、私 寝てたかしら」
「少し疲れたのかもしれないね」
「そうだ、あなたの超能力ってどういう物なの?」
(直球で来たな)
「あまり人に話すことではないけど、ばれると大変なことになるから言わないようにしているんだ」
「どんな能力なの?教えて」
「誰にも言わないのなら教えるよ」
「神に誓うわ、両親にも誓う」
こうやって虜になったリーさんだが、彼女が本来持っているはずの超能力。
宗助が封印していた2つの能力だが、今回調べてみたらまた一つ超能力が発生していた。
そちらの方はあまり害がないみたいなので自然と彼女のプラスになるようになると思うが。
【体力アップか、確かにこの能力ならばさほど問題はないな】
【宗助様が能力を封印したので新たに発生したようです】
体力アップ、要するに身体強化系の超能力、怪我がすぐ治ったり疲れにくくなるような能力だ。
そのうちオリンピック選手にでもなれるぐらいの身体能力が付く可能性もある。




