大陸間転送実験その2
大陸間転送実験その2
ゴーグルをするとカウントダウンが始まる、前回行われた九州への転送実験とほぼ同じ。
少し耳障りなキーンと言う音がするが、その後は見事にUSAの受送側ベースに石神さんが現れる。
「おー」
「成功しましたね」
「すごい」
「皆さまお静かに、今度はUSA側から研究員のリオールズさんが転送されてきます」
「5分後です、カウントが始まるまで待ちましょう」
やはりUSA側の転送実験に参加していたのは研究員のリオさんだった。
「目の前で見るまで信じていなかったが、これほどとは…」
「叔父様」
「分かっている、すでに手配はしているところだ、後は君のデータがあればすぐに作成できる」
「期待しておりますわ」
「それより君には彼の鹵獲を頼んだよ」
「分かりました、お任せください」
【聞こえているんだが…】
【聴覚の感度を4倍に上げると10メートル以内の話声は全て聞き取れます】
【まったく面倒な人たちだ】
【どうなさいましょう?】
【今までもしてきたから、それほど対応は変わらないかな】
【逆に彼女を専属で僕に着けたということは他の工作員は邪魔しないということになるはず】
【そういう見方もございますね】
【まあCNのESP部隊と言うのがどこまでの規模かわからないからな~】
【現在の所、おそらく50人規模ではと思います、それぞれに補佐の工作員が1名ないし3名付くようです】
【それで総勢300人規模かなるほど】
今度はこちらから遠山さんが転送されると、向こう側で歓声が上がり。
数分後USA側からこちら側の転送装置に研究員のキャリーさん(キャリー・ウィリアム)
が転送されてきた。
「成功だ!」
「2回ともに転送できたぞ」
「ハーイナイスチューミーチュー」
【ん?今こっちを見てウィンクした…】
【多分USAのSVRと思われます】
【そういえばMS工科大はSVRが多いと聞いたことがある】
【大統領補佐官もMS大出身です】
USAのサバイバーはほぼ全員俺の話を聞いているのだろう、なんとなくこそばゆいがある程度の情報は知って置いてもらわないと、いざというときには話が早いので致し方がないところだ。
午前と午後、朝10時から始まった実験は午後3時には全て終了した。
途中で器械が故障するとか、電力不足でダウンするとかいうアクシデントは一切なかった。
まあ当然と言えば当然なのだが。
「すばらしい」
「ブラボー」
あちらこちらで拍手喝采、そして5時からは懇談会と言う形でまた赤坂へと行くのだが、今回は強く拒否させてもらった。
おじさんたちの話は聞いているとなぜだか日本と言う国がこの先どうなるのかが不安になるからだ。
宇宙へと足を延ばすことができると知っても、簡単に普段の行いなど変わることはないが。
言葉の節々に上下関係を誇示する話し方は聞いていても不快感だけが残る。
大学へ通うようになって、学生たちの曇りのない目を見ると、なぜだか大人になるのは遠慮したくなるのだから不思議だ。
自分が学生からは離れてしまいそうな、そんな感じになるのが怖くなっているのかもしれない。




